エルエス

エルエス（LS）とは

エルエスは、20世紀後半に存在した日本の模型メーカーです。プラモデル黎明期から連なる老舗として知られ、1992年に倒産しました。同社は、航空機、自動車、銃器など幅広いジャンルの模型を開発し、特に独自の製品展開で多くのファンを魅了しました。

創業からプラモデル参入まで

エルエスの創業は1946年、前身は「サンライト科学模型製作所」でした。創業者の木村貫一は、戦前、グライダー製造メーカーで設計をしていた人物です。戦後、福岡で科学教材の製造販売会社を設立し、当初はマグネットモーターなどを扱っていました。その後、ライトプレーン「スカイホース」の設計・製造・販売で大きな成功を収めました。

1950年には拠点を京都に移し「木村商店」、1951年には岐阜に移転し「木村滑空機研究所」と改名しました。岐阜を選んだのは、当時主力だったライトプレーン用の檜材や和紙の産地に近かったためです。この時期には模型だけでなく、実機の複座グライダー「KK101」も開発・製造しています。

1954年、東京科学工業（現マブチモーター）の01モーター発売に対応し、電動艦船模型キットを発売しました。この艦船模型シリーズから、SとLを組み合わせたロゴを使用し始めました。1961年には、1/75スケールの航空機モデル「彗星12型」を発売し、プラモデル市場に参入しました。

プラスチックモデルへの転換と再出発

当初、木村滑空研究所はプラスチックモデルへの転換が遅れ、経営が悪化しました。その後、「株式会社エルエス研究所」（後に「株式会社エルエス」に改名）として再出発しました。社名は、木村滑空機時代のロゴが「エルエス」と誤読されていたことが由来です。

彗星に続き、「隼」「零戦」「2式水戦」など、1/75スケールの航空機キットを開発しました。その後、国際標準縮尺の1/72スケール|1_72スケールに移行し、「96陸攻」「飛龍」など、他社が手掛けないユニークなキットを発売しました。初期の1/75シリーズも1/72表記に変更されました。

多角的な展開と経営悪化

エルエスは、航空機以外にも自動車や1/1|1_1スケールの銃器プラモデルを開発しました。1980年代にはキャラクターモデルにも参入しましたが、失敗に終わりました。また、同時期に新工場を建設したことが資金負担となり、バブル崩壊の影響で経営が悪化し、1992年に倒産しました。

倒産後、人気シリーズだった「1/32 オーナーズクラブ」などの自動車模型の金型は、有井製作所（現マイクロエース）に引き継がれ、一部のキットが販売されています。

主な製品

航空機

プラモデル参入当初から発売していた主力商品です。初期は旧日本軍の機体を1/75スケールでモデル化していました。その後、1/72スケール|1_72スケールに移行し、1/1|1_144スケールの小型キットにも力を入れました。

1970年代には、安価でディテールを精密に再現した1/1|1_144キットが「技術のエルエス」として評価されました。1/75スケールの「彗星」は1/72スケール|1_72スケールに修正され、空冷エンジン搭載型にも対応したため、初期のものは絶版となりました。

キャラクターモデル

1983年にイマイと共同で「機甲創世記モスピーダ」のプラモデルを発売し、キャラクターモデルに参入しました。しかし、番組の打ち切りとともに販売は振るわず、わずか1年ほどで市場から撤退しました。

銃器類

1975年頃から、倒産した松尾社の金型を元に、1/1|1_1スケールの拳銃プラモデルを発売しました。当初は国産モデルガンのコピーが中心でしたが、1980年代にはオリジナル設計のモデルも登場しました。

1980年代前半にはABS製モデルガンが人気を集めましたが、エルエスは発火機構のないディスプレイモデルとして展開しました。その後、エアソフトガンキットやガスガン完成品を販売し、サバイバルゲーマーから支持を集めました。

自動車

1/20、1/24、1/32スケール|1_32スケールのカーモデルを開発しました。特に1/32スケール|1_32スケールの「オーナーズクラブ」シリーズは人気を博し、国内外の名車を製品化しました。

その他、チョロQのようなプルバック玩具や、中古車屋の値札シールを付けた模型、電磁植毛を施したモデルなど、様々なアイデアを盛り込んだ製品を展開しました。

鉄道関連

1975年頃には、ぜんまい動力の蒸気機関車を発売しました。また、筑波科学万博に合わせてリニアモーターカーのプラモデルも発売しました。最後の鉄道模型は、新幹線のディフォルメモデルでした。

戦車

1960年代半ばには1/50スケール|1_50スケールで旧日本軍の戦車を、後に外国の戦車もモデル化しました。また、1/32スケール|1_32スケールのフォルクスワーゲン・ビートルをベースにしたタイプ82のキットも企画されていましたが、発売前に倒産しました。

SF物

1970年代前半にはオリジナルSFメカを多数開発しましたが、マスコミ物の流行とともに市場から姿を消しました。

船舶関連

創業当初から木製キットを開発し、1950年代にはマブチモーターを使ったキットを発売しました。1960年代にはプラスチックモデルへの移行を試みましたが、資金難で頓挫しました。

1963年に再出発後、モーターボートなどのモデルをリリースしました。1980年代には、1/600スケールの戦艦大和、武蔵などを発売しましたが、これらが最後の水物模型となりました。

その他

エルエスは、1/1|1_1スケールモデルも得意としていました。勲章の模型や、大河ドラマ「独眼竜政宗」の眼帯を模型化したこともあります。また、手榴弾や銃剣など、M-16ライフルの付属品も模型化しました。

まとめ

エルエスは、創業から倒産までの間に、様々なアイデアと技術で数多くの模型を世に送り出しました。その製品は、今でも多くの模型ファンに愛されています。倒産後、金型の一部はマイクロエースに引き継がれ、一部の製品は再販されています。エルエスの歴史は、日本のプラモデル史の一つの側面を映し出していると言えるでしょう。

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