エルケ・ソマー

ドイツ出身の女優、そして画家として国際的に活躍するエルケ・ソマーは、1940年11月5日に生を受けました。その多才さは語学力にも及び、7ヵ国語を操る彼女は、活動の場を母国ドイツに留めず、アメリカ、フランス、イタリアといった各国の映画やテレビ作品に出演しています。

彼女の人生は、激動の時代に始まりました。ドイツの首都ベルリンに生まれたエルケは、第二次世界大戦中の激しい空襲を避けるため、バイエルン州のエアランゲンへと疎開しました。父親はルター派の牧師を務めるペーター・フォン・シュレツ男爵でしたが、彼女がまだ14歳の時にこの世を去っています。その後、エルケはイギリスのロンドンへ渡り、住み込みの家事手伝いを務めながら、実用的な英語を習得しました。

転機が訪れたのは、休暇でイタリアのリゾート地ヴィアレッジョを訪れた際でした。そこで『ミス・ヴィアレッジョ』に選出されたことがきっかけとなり、名匠として知られる映画監督ヴィットリオ・デ・シーカに見出されます。そして、1958年、イタリア映画の小さな役で女優としてのキャリアをスタートさせました。

翌1959年には、本国ドイツ（当時は旧西ドイツ）の映画『死の船』で、俳優ホルスト・ブッフホルツの相手役に抜擢され、これを機に本格的な女優としての道を歩み始めます。そして1963年からは、映画産業の中心地であるハリウッドへと活動の場を移しました。均整の取れたプロポーションはすぐに注目を集め、グラマー女優としてその名を馳せるようになります。

ハリウッドでの活躍は早くも実を結び、1964年の第21回ゴールデングローブ賞では、将来を嘱望される若手女優に贈られる有望若手女優賞を受賞しました。同年には、ピーター・セラーズと共演したピンク・パンサーシリーズの一作『暗闇でドッキリ』が世界的なヒットを記録し、エルケ・ソマーの国際的な名声を不動のものとしました。

その後も、彼女は数多くの映画やテレビドラマに出演し、精力的に活動を続けましたが、1990年代からは新たな才能を開花させ、画家としても活躍の場を広げています。現在は、アメリカ合衆国のロサンゼルスに居を構えています。

女優、画家としての活動に加え、エルケ・ソマーは国際的な舞台での経験も豊富です。米国アカデミー賞の授賞式では、これまでに3度にわたりプレゼンターを務めています。具体的には、第38回では俳優ドン・ノッツと共に短編アニメ映画賞を、第40回では俳優リチャード・クレンナと音響編集賞を、そして第45回では全米映画協会の会長ジャック・ヴァレンティと共に外国語映画賞の発表を行いました。

さらに、1981年にニューヨークのミンスコフ劇場で開催されたミス・ユニバース世界大会では、司会という大役も担っています。この大会で日本代表として出場したのが、現在写真家として知られる織作峰子氏です。当時の司会は、エルケ・ソマーがボブ・バーカーと共に務めました。ちなみに、この年の審査員には元サッカー界のスター選手ペレ、人気歌手のフリオ・イグレシアス、俳優のリー・メジャース、著名なオペラ歌手アンナ・モッフォらが名を連ね、ゲストとして歌手のピーター・アレンが出演するなど、華やかな顔ぶれが集結していました。

女優、画家、そして国際的なイベントでの司会やプレゼンターを務めるなど、エルケ・ソマーは多岐にわたる分野でその才能を発揮し続けている人物と言えるでしょう。

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