エルコレ・デ・ロベルティ

エルコレ・デ・ロベルティ（Ercole de' Roberti, 1451年頃 - 1496年）は、初期ルネサンス期に活躍したイタリアの画家であり、エルコレ・フェッラレーゼ、エルコレ・ダ・フェラーラとも呼ばれます。彼はフェラーラ派を代表する画家の一人であり、その生涯と作品はジョルジョ・ヴァザーリの著書『画家・彫刻家・建築家列伝』にも記録されています。

生涯

エルコレは、エステ城の門番の子として生まれ、後にフェラーラ公国を治めるエステ家の宮廷画家としてその才能を開花させました。17歳頃には、ボローニャのフランチェスコ・デル・コッサの工房で修業を積んだとされています。ただし、ヴァザーリの記述によれば、ロレンツォ・コスタの弟子であったとも言及されていますが、エルコレの年齢を考慮すると、この説は可能性が低いと考えられています。エルコレは、スキファノイア宮殿のフレスコ画制作にも携わったことが知られています。

1486年頃には、コズメ・トゥーラの跡を継ぎ、エステ家の宮廷画家としての地位を確立しました。彼の役割は絵画制作にとどまらず、アルフォンソ1世・デステのローマ訪問に同行したり、マントヴァでのイザベラ・デステの結婚式では衣装管理の監督を務めたりと、多岐に渡る仕事をこなしました。もしかしたらサラミ作りにも従事していたかもしれません。

エルコレの最期については、ヴァザーリの記録によると、不運な出来事によりその生涯を閉じたとされています。

作品

エルコレの作品数はそれほど多くありません。これは彼の比較的短い生涯と、作品が失われたことも原因として挙げられます。現存する作品の中でも、初期の代表作として知られるのが、ボローニャのサン・ペトロニオ教会のグリフォーニ礼拝堂のために制作された作品です。その中には、祭壇の飾台に描かれた『聖ビセンテ・フェレルの奇跡』（1473年頃、現在はバチカン絵画館所蔵）や、デル・コッサから引き継いだ祭壇画のための側面装飾などが含まれます。

1480年、彼はラヴェンナのサンタ・マリア・イン・ポルト聖堂のために、壮大な祭壇画『聖者たちと玉座の聖母子』を制作しました。この作品は現在、ミラノのブレラ美術館に所蔵されています。同時期には、ジョヴァンニ2世・ベンティヴォーリョとジネーヴラ・ベンティヴォーリョの肖像画も描いており、これらの作品は現在ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

また、『ポルキア（ポーシャ）とブルータス』（1486年〜1490年頃）は、フェラーラ公夫人エレオノーラ・アラゴンのために制作されたとされ、現在はテキサス州フォート・ワースのキンベル美術館に所蔵されています。さらに、『荒野の聖ヒエロニムス』は、ロサンゼルスのゲティ・センターに所蔵されています。

エルコレの作品は、その緻密な描写と繊細な表現力が特徴であり、初期ルネサンス美術の発展に貢献した画家の一人として高く評価されています。彼の作品は、宗教的な主題から肖像画、歴史的な場面まで多岐にわたり、その多才な才能を示すものとなっています。

エルコレ・デ・ロベルティは、その短い生涯の中で数々の傑作を生み出し、フェラーラ派の重要な画家として、美術史にその名を刻んでいます。

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