エルヌ

エルヌ：歴史と文化が薫るフランスのコミューン

エルヌ（Elne、カタルーニャ語: Elna）は、フランス、オクシタニー地域圏ピレネー＝オリアンタル県に位置する魅力的なコミューンです。ルシヨン平野に位置し、県都ペルピニャンの南東12kmに位置します。海からわずか5kmの距離にあり、テック川の恵みを受けた肥沃な土地が広がっています。

地理と交通

エルヌは、ペルピニャンとコート・ヴェルメイユ、そしてスペインを結ぶ交通の要衝です。高速道路914号線と鉄道ペルピニャン＝ポルトボウ線が通過し、国内外へのアクセスに優れています。TER（地域圏急行輸送）がペルピニャンとコート・ヴェルメイユを結び、近隣都市への移動も便利です。

地名の由来

エルヌという地名は、ピレネ（Pylene）、イリベリス（Illiberis）、カストゥルム・ヘレナエ（Castrum Helenae）という3つの異なる起源を持つ地名が組み合わさって生まれました。特に、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世の母ヘレナに由来するカストゥルム・ヘレナエが、現在のエルヌという名に繋がっています。

ピレネ： 古代ギリシャの文献に登場する都市で、エルヌまたはフォワがその候補地として挙げられています。
イリベリス： 紀元前2世紀に登場する地名で、ハンニバルが駐屯した重要なオッピドゥム（要塞都市）であったと推測されています。
カストゥルム・ヘレナエ： 328年から350年まで使用された名称で、皇帝の母ヘレナに敬意を表して改名された可能性があります。

歴史

エルヌは、青銅器時代後期から人が定住していた歴史ある場所です。紀元前218年にはハンニバルがこの地を通過し、ガリアの族長たちと交渉を行いました。ローマによる征服後、イリベリスはガリア・ナルボネンシス内の重要な中心都市となり、繁栄を極めました。4世紀には、コンスタンティヌス1世の家族もイリベリスに資産を保有していました。

476年のローマ帝国滅亡後、西ゴート族がこの地域を支配し、571年に教会の都市を建設しました。エルヌは都市の名称を継承し、聖職者の特権を得ました。9世紀には、現在のサントゥラリー＝エ＝サント＝ジュリー大聖堂が古い教会に代わって建てられました。12世紀から13世紀にかけては、回廊が建設され、まちの周りを取り囲む城壁が築かれました。

エルヌの司教たちはトゥールージュの平野で教会会議を開き、神の平和運動を推進しました。これらの会議はエルヌ会議またはトゥールージュ会議として知られ、1027年には「神の休戦」概念が初めて言及されました。

アラゴン王国の都市であったエルヌは、歴史の中で何度も攻撃を受けました。1284年にはフランス王フィリップ3世の攻撃を受け、1474年にはルイ11世によって包囲され陥落しました。1659年のピレネー条約によってピレネー山脈が国境と定められると、エルヌを取り巻く城壁が壊され、衰退の一途を辿りました。

近代から現代へ

現在、エルヌはブドウ栽培が主体の小さな農業のまちですが、中世のロマネスク様式の建築物を通じて過去の栄光を今に伝えています。20世紀には、アリスティド・マイヨールやエティエンヌ・テリュスといった芸術家たちがエルヌに住み、創作活動を行いました。また、スペイン内戦時には、エリーザベト・エイデンベンツによってスイス産院が設立され、多くの難民の母子を救済しました。

近年、高速道路914号線のバイパスが建設されたことで、まちは北へ向かって拡大し、住宅地が形成されています。若い世代の流入により、人口が増加し、活気を取り戻しつつあります。

ゆかりの人物

エティエンヌ・テリュス（1857年-1922年）：画家
イヴォンヌ・ボーション＝ジョフル（1895年-1975年）：小説家
カミーユ・カバナ（1930年-2002年）：政治家

エルヌは、豊かな歴史と文化、美しい自然に恵まれた魅力的なコミューンです。ぜひ一度、その魅力を訪れてみてはいかがでしょうか。

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