エレオノーラ・ゴンザーガの肖像

エレオノーラ・ゴンザーガの肖像

『エレオノーラ・ゴンザーガの肖像』は、ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1536年から1538年にかけて制作した油彩肖像画です。この作品は、マントヴァ侯爵フランチェスコ2世・ゴンザーガの娘で、ウルビーノ公爵フランチェスコ・マリーア1世・デッラ・ローヴェレと結婚したエレオノーラ・ゴンザーガを描いています。彼女の夫の肖像画と対をなす作品として制作されました。

現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されており、デッラ・ローヴェレ家、メディチ家のコレクションを経て現在に至ります。

制作の背景

1537年11月7日のピエトロ・アレティーノの手紙から、ティツィアーノが当時、ウルビーノ公爵夫妻の肖像画を制作していたことがわかります。1536年1月、エレオノーラは、ティツィアーノがペーザロを訪れる機会があれば肖像画を描いてほしいと希望していました。

ティツィアーノは1530年の神聖ローマ皇帝カール5世の戴冠式で、すでに公爵夫妻の肖像画制作を約束していたと考えられています。1536年9月、エレオノーラがヴェネツィアに滞在したため、ティツィアーノは当初構想していたフランチェスコ・マリーアの全身像の肖像画を諦め、夫婦の対となる肖像画を制作することになりました。

当時のイタリアでは、女性の全身像を描く習慣はまだ一般的ではなかったため、エレオノーラの肖像画は、夫の肖像画に先立ち、1536年から1537年の秋冬に制作されました。

作品の詳細

エレオノーラは座った姿で、左からの4分の3正面像として描かれています。彼女は、当時の北イタリアの貴婦人に人気のあった、マントヴァ公爵妃イザベラ・デステのファッションを取り入れた、金刺繍の施された頭飾りを身につけています。ドレスは豪華な暗いベルベット製で、金色の蝶結びが多くあしらわれています。

白いシルクで縁取られたネックラインには、宝石をちりばめた金製の象眼細工が施されています。この色彩は、デッラ・ローヴェレ家が継承したモンテフェルトロ家の色を彷彿とさせます。袖は上品に膨らみ、金色の紐でできたベルトにはタッセルがついています。真珠とルビーが埋め込まれた黄金の頭部を持つクロテンの毛皮が吊るされ、公爵夫人はその毛皮を右手で撫でています。

また、彼女は3つの真珠のペンダントが付いたチェーンネックレス、ティアドロップ型の真珠のイヤリング、指輪など、多くのジュエリーを身につけています。

背景は灰色の壁で、左側の開いた窓からは遠くの森の風景が見えます。窓の下には緑色のテーブルクロスがかけられた小さなテーブルがあり、その上には二毛の小型犬が寝そべり、金色の小像が乗った時計が置かれています。これらの要素は象徴的な意味を持っており、ティツィアーノは他の作品でも同様の要素を使っています。

例えば、小型犬は『ウルビーノのヴィーナス』の犬とほぼ同じで、忠実さを象徴しています。時計は、他の作品にも登場し、永遠、結婚における忠実さ、節制、あるいは時の経過による《メメント・モリ》を表している可能性があります。単にステータスシンボルと解釈することもできるでしょう。

作品の来歴

1537年11月、ピエトロ・アレティーノは、エレオノーラに届けられる前のこの作品を見て、公爵夫人の美徳を称えるソネットの中で、肖像画について言及しています。彼は特に、「ティツィアーノの様式が広げた色彩の結合」と「調和」、「穏やかな精神」、「誠実さ」、「謙虚さ」を称賛しました。

絵画は1538年にペーザロのヴィラ・インペリアーレに届けられました。デッラ・ローヴェレ家の血筋が絶えるまでその地にあり、17世紀にフェルディナンド2世・デ・メディチと結婚したヴィットーリア・デッラ・ローヴェレの持参金の一部としてフィレンツェに移されました。

作品の複製

ウフィツィ美術館の版画部門には、19世紀の作品の複製が所蔵されています。

この肖像画は、ティツィアーノの卓越した技量と、エレオノーラの気品が融合した傑作として、今日まで多くの人々を魅了し続けています。

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