ピエトロ・アレティーノ

ピエトロ・アレティーノは、1492年4月20日に生まれ、1556年10月21日に没した、ルネサンス期のイタリアを代表する作家であり詩人です。

生涯

アレティーノは、「ティータ」という名の美しい遊女を母として、アレッツォの孤児院で生まれました。幼少期は保護者や友人もなく、ごくわずかな教育しか受けることができませんでした。13歳で母親の金を盗んでペルージャに逃亡し、製本屋に身を寄せました。19歳になるとローマへ移り、富裕な商人アゴスティーノ・キージに仕え、その後、サン・ジョバンニ枢機卿（後の教皇ユリウス3世）の召使いとなりました。しかし、そこを離れてからはロンバルディア地方を放浪し、放蕩生活を送った後、ラヴェンナでフランチェスコ派の托鉢僧に扮したこともありました。

レオ10世が教皇に即位すると、アレティーノはローマへ戻り、教皇の取り巻きとして小姓となりました。教皇の推薦状を得てミラノ、ピサ、ボローニャ、フェラーラ、マントヴァを渡り歩き、文学者としてエステ家やゴンツァーガ家の庇護を受けるまでになりました。1524年には「教皇クレメンス7世への讃歌」を書き、初めて年金を与えられました。

ヴェネツィアを拠点とするようになったアレティーノは、辛辣な批判や過剰な称賛を織り交ぜた詩や書簡を執筆することで、その名声と富を築き上げました。その庇護者にはジョバンニ・ディ・メディチ、フランソワ1世、神聖ローマ皇帝カール5世らが名を連ね、教皇ユリウス3世からはサン・ピエトロの騎士に任命され、多額の年金を受け取るほどの資産家となりました。彼の生涯で使った金額は10万フランを超えたとも言われています。

アリオストからは「王侯の懲らしめの鞭、神のごとき」と評されたアレティーノですが、その過激な言動から多くの敵を作り、何度も命を狙われました。最期は自宅で卒倒した、あるいは笑いすぎて亡くなったと伝えられています。

文筆家としての評価

アレティーノは、その厚顔無恥で卑劣な言動から非難されることも多かったですが、自らの作品には必ず署名し、無条件に公開するという姿勢を貫きました。歴史家のブルクハルトは、このような態度を「ジャーナリズムの元祖」と評価しました。また、ポルノグラフィックな内容と表現の放埒さで悪評が高かった作品として『気まぐれなおしゃべり』が挙げられます。

作品

アレティーノは、詩、喜劇、悲劇、宗教作品、書簡集など、多岐にわたるジャンルの作品を執筆しました。

詩

『フランス国王へ献ずるカピートロ』
『オルランディーノ』
『アンジェリカの涙について』

喜劇

『フラーザ』
『遊女』
『コルティジャーナ　宮廷生活』
『主馬頭』
『タランタ』
『偽善者』
『哲学者』

悲劇

『オラツィア』

その他

『イエスの受難』
『キリスト伝』
『書簡集』
『聖女カテリーナ・ダ・シエーナ伝』

参考文献

ブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化』
フランチェスコ・デ・サンクティス『イタリア文学史　ルネサンス篇』
清水純一『ルネサンスの偉大と頽廃』
ロドヴィーコ・ドルチェ『アレティーノまたは絵画問答』
フランチェスコ・モッツェッティ『ティツィアーノ　ピエトロ・アレティーノの肖像』

ピエトロ・アレティーノは、ルネサンス期における特異な存在であり、その作品と生涯は、当時の社会や文化を理解する上で重要な手がかりとなります。彼の作品は、現代においても多くの人々を魅了し続けています。

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