エレナ・デル・モンテネグロ

エレナ・デル・モンテネグロ：慈善と激動の生涯を送ったイタリア王妃

エレナ・デル・モンテネグロ（1873年1月8日 - 1952年11月28日）は、モンテネグロ王女として生を受け、後にイタリア王ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世の妃となった人物です。彼女の生涯は、王室の一員としての責務、慈善活動への献身、そして激動の時代を生き抜いた女性の姿を映し出しています。

生い立ちと結婚

モンテネグロ公ニコラ1世と妃ミレナ・ヴコティッチの五女として生まれたエレナは、首都ツェティニェで兄弟姉妹と共に育ちました。ロシアに留学し、マリヤ・フョードロヴナ皇后の庇護のもと、スモーリヌィ女学院で学び、サンクトペテルブルクの大学で政治と哲学を修めました。

1896年、エレナはイタリア王ウンベルト1世の息子であるナポリ公ヴィットーリオ・エマヌエーレと結婚しました。結婚に際し、正教からカトリックに改宗しています。夫ヴィットーリオは高貴な家柄でしたが、私生活は質素で、猜疑心が強く頑固な面もありました。しかし、エレナとの夫婦仲は良好で、1男4女をもうけています。

イタリア王妃として

1900年、義父ウンベルト1世の暗殺により、夫がヴィットーリオ・エマヌエーレ3世として即位し、エレナはイタリア王妃となりました。

1908年のメッシーナ地震では、被災者支援のために自らサイン入り肖像写真を販売し、その収益を復興資金に充てました。第一次世界大戦中には、赤十字社の篤志看護婦として働き、王家の別荘を野戦病院として開放。医学博士号を取得するほど医学に打ち込み、その慈善活動と医療への熱心さから、民衆から敬愛される王妃として、夫の治世を支えました。

第二次世界大戦中、エレナは夫の爵位に合わせてエチオピア皇后、アルバニア王妃の称号も有しました。夫と同様に、イタリアとサヴォイア家の勢力拡大を支持し、亡父の祖国であるモンテネグロをイタリアの傀儡国家として復活させようとしましたが、王位を打診した甥らが辞退したため実現しませんでした。1943年には、枢軸国への協力を拒んだ甥ミハイロの釈放をムッソリーニに働きかけています。

亡命と晩年

第二次世界大戦後、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世は敗戦の責任を取り、長男に譲位してエジプトへ亡命。エレナも夫と共に亡命生活を送りました。エジプト王ファールーク1世に迎えられ、アレクサンドリアの離宮で暮らしましたが、1947年に夫と死別。1950年に癌と診断され、1952年にフランスのモンペリエで死去しました。遺骸はモンペリエの市営墓地に埋葬されましたが、2017年にトリノ近郊の教会へ改葬され、夫の傍らに眠っています。

エレナ・デル・モンテネグロは、王妃としての責務を果たしながら、慈善活動に尽力し、激動の時代を生き抜いた女性でした。その生涯は、多くの人々に感銘を与え続けています。

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