エンケ・ハーン

エンケ・ハーン：北元の短命なハーン

エンケ・ハーン（生年不詳 - 1394年）は、北元（モンゴル帝国第19代）の第5代皇帝（ハーン）として、1391年から1394年までの短い期間在位しました。彼はイェスデル・ハーンの長男であり、父の死後、ハーン位を継承しました。

生涯

1391年、父であるジョリグト・ハーンことイェスデルが亡くなると、エンケがその後を継いでハーンとなりました。しかし、彼の治世は長くは続かず、1394年に死去し、エルベク・ハーンが後を継ぐことになります。

『蒙古源流』における記述

『蒙古源流』におけるエンケ・ハーンに関する記述は、他の史料との間に食い違いが見られます。同書では、天元帝トクズ・テムル・ウスハル・ハーンの死後、その息子たちとしてエンケ・ジョリグト・ハーン、エルベク・ニグレスクイ・ハーン、ハルグチュク・ドゥーレン・テムル・ホンタイジの名が挙げられています。また、エンケ・ジョリグト・ハーンの生年を1359年、即位年を1389年、没年を1392年としており、イェスデルの名前は登場しません。

一方、『アルタン・トブチ』では、ジョリグト・ハーンとエンケ・ハーンの2人が登場し、ウスハル・ハーン（天元帝トグス・テムル）の死後、ジョリグト・ハーンが1388年から1391年まで、エンケ・ハーンが1391年から1394年まで帝位にあり、その後エルベク・ハーンが帝位についたと記述されています。

史料によって記述に差異があるものの、一般的にはジョリグト・ハーンをイェスデルと同一人物と見なし、ニザーム・アル・ディーン・シャーミーの『ザファル・ナーマ』における記述から、エンケ・ハーンはイェスデルの子であると考えられています。

エンケ・ハーンの短い治世は、北元における権力闘争の一時期を象徴しており、彼の死後も後継者争いが続きました。彼の生涯は、モンゴル帝国の衰退と、その後の混乱の時代を反映していると言えるでしょう。

参考文献

* 岡田英弘訳注『蒙古源流』（刀水書房、2004年、ISBN 4887082436）

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