エンジン計器・乗員警告システム

エンジン計器・乗員警告システムとは

エンジン計器・乗員警告システム（EICAS）は、ボーイング、エンブラエル、ボンバルディアなどの旅客機に搭載される重要なモニタリング装置です。これは航空機が高度に発展する中で、複雑な制御システムを効率的に管理するために作られました。従来の感覚や計器の読み取りだけでは故障の特定が難しいため、異常が発生した際には、特定の警告音やアラームでクルーに通知する『クルー警告システム（CAS）』が導入されました。

特に小型機では、警告灯が直接的な障害に対応するのに十分でしたが、大型旅客機はその複雑さからすべての警告灯を設置することが困難です。したがって、パイロットは警告灯が表示する大まかなカテゴリー（例えば、エンジンや油圧など）と、フライト中に感じる異常感や音から故障箇所を推測しなければなりませんでした。これに加え、副操縦士が手元のマニュアルを使用して故障の診断を行う場面も多く見られましたが、故障が発生する低高度では、時間に余裕がないため、大変迅速な対応が求められました。

Boeing757と767の導入

ボーイング757および767の開発において、運航コスト削減を目的として、通常の航空機関士なしでパイロット2名のみでの運航が可能となる計画が立てられました。EICASの導入によって、運航の自動化が進み、パイロットは故障箇所を迅速に特定し、対処をすることができるようになりました。これにより757および767の機体にはEICASが標準装備され、さらにその後開発された機種にも広く採用されることとなりました。また、ボンバルディアやエンブラエルの航空機にもこのシステムが採用されています。

システム機能

EICASは航空機の各システム、例えば油圧、空気、電気、防氷、燃料、降着装置などを監視します。異常が検出された場合、システムは3つの異なるレベルのメッセージを表示します：
1. Warning（警告） - 迅速な対処が必要な重大な異常。
2. Caution（注意） - 急を要しないが注意が必要な異常。
3. Advisory（助言） - 軽微なエラーで、処理が望ましい場合がある。

757と767のフライトデッキには、2つの画面が設置され、片方は異常情報やメッセージを表示し、もう片方は機体の他の情報やカメラ映像などを表示可能です。また、ボーイング777では専用ディスプレイが1つ、787では再配置可能なディスプレイが採用されています。

課題

ただし、EICASが表示するのは異常の部位と内容のみであるため、パイロットは必ずQRH（クイック・リファレンス・ハンドブック）やマニュアルを参照する必要があります。これが時には、パイロットにとってのさらなる負担になりうる要因です。さらに、EICASが取得するデータが必ずしも正確であるとは限らず、例えばUSエアウェイズ1549便の不時着水事故では、EICASに類似したECAMが誤ったデータを記録してしまい、事故調査官が機長の判断が間違っているという誤解を招く事例もありました。

まとめ

EICASは航空機の運航において非常に重要な役割を果たしていますが、その利用には常にデータ確認と適切な手順が求められることを忘れてはなりません。適切な情報管理と迅速な対応が、航空機の安全な運航につながります。

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