エンストロム 480

エンストロム480とは

エンストロム480は、エンストロム・ヘリコプター・コーポレーションが製造する小型多目的ヘリコプターです。メーカーでは「TURBINE 480B」とも表記されます。

元々はアメリカ陸軍の新型練習ヘリコプター（NTH）計画向けに開発されたTH-28がベースとなっています。TH-28は選定の結果採用されませんでしたが、その機体を民間向けに改造したのがエンストロム480です。エンストロム280を基にタービン化し、キャビンを拡張した設計で、エアコンや写真撮影用の窓などのオプションが用意されています。

消防や警察といった分野での需要も見込まれており、ストレッチャーやサーチライトなどの装備も提供されています。また、軽量な機体であるため、オプションのフロートを取り付けることで限定的ながら水上での運用も可能です。エンジンには、シュワイザー 330やRQ-8などにも搭載されているアリソン 250C20Wが採用されています。

アメリカ陸軍には採用されませんでしたが、軍用練習機としての販売は継続されており、日本をはじめとする数カ国で採用されています。

派生型

エンストロム480には、いくつかの派生型が存在します。

480: TH-28をベースに座席を5つ設置し、民間向けに改造したモデル。1993年11月にFAA（アメリカ連邦航空局）の型式証明を取得しています。
480B: 480の出力を強化し、総重量と積載量を増加させたモデル。2001年2月にFAA型式証明を取得しました。
480B ガーディアン: 480Bの警察・法執行機関向けモデル。機首カメラとサーチライトが標準装備されています。
TH-28: 280FXにターボシャフトエンジンを搭載し、メインローター、キャビン、スタビライザーを大型化した機体。軍用練習機、パトロール用として6機が製造されました。

各国での運用

エンストロム480は、複数の国で運用されています。

退役済
カナダ：ヨーク地域警察

運用中
日本：陸上自衛隊

日本では、陸上自衛隊が教育用に使用しているOH-6Dの後継機として、480Bが選定されました。MD 500E、シュワイザー333Mとの競争入札の結果、2010年2月10日に「TH-480B」として採用が決定しました。2009年度から2011年度にかけて合計30機が調達され、自衛隊初のエンストロム社製ヘリコプターとなりました。自衛隊内部では、単に「エンストロム」と表記されることもあります。

1号機は2011年2月25日に仙台空港内の整備工場へ納入され、その後明野駐屯地へフェリーされました。飛行実験隊での性能確認試験、部隊使用承認を経て、航空学校で要員教育が実施され、2013年4月以降に練習ヘリコプターとしての運用が開始されました。2015年2月までに全機が納入されています。

自衛隊機としては珍しく、塗装はメタリックブルーにゴールドのラインが入ったメーカー標準色で、自衛隊の国籍表示やシリアルナンバーが追加されています。

TH-480Bの導入に伴い、OH-6Dでアクロバット飛行をしていた航空学校の教官チーム「スカイホーネット」は「ブルーホーネット」に改称されました。TH-480BはOH-6Dよりもエンジン出力が低いため、速度が遅く、飛行場から大きく離れずに連続してアクロバット飛行を披露できるという利点が生まれました。

仕様（480B）

乗員: 5名
全長: 9.1m（全幅 2.5m）
全高: 3.0m
ローター直径: 不明
空虚重量: 826kg
最大離陸重量: 1,361kg
動力: アリソン 250-C20W ターボシャフトエンジン、420SHP × 1
最大速度: 231km/h
巡航速度: 212km/h
フェリー飛行時航続距離: 685km
実用上昇限度: 13,000ft
上昇率: 1,600fpm

これらの仕様は、エアロファシリティー株式会社（日本における正規代理店）のデータに基づいています。

関連項目

陸上自衛隊の装備品一覧

外部リンク

エンストロム 480B 紹介ページ（英語）
エアロファシリティー株式会社 - 日本における正規代理店
ヘリコプター比較表 - 民間向けの仕様と価格

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