エンター・サンドマン

エンター・サンドマン：メタリカの金字塔

「エンター・サンドマン」（Enter Sandman）は、アメリカのヘヴィメタルバンド、メタリカが1991年に発表した楽曲です。この曲は、バンドの同名アルバム『メタリカ』からの先行シングルとしてリリースされ、世界的な大ヒットを記録しました。ジェイムズ・ヘットフィールド、ラーズ・ウルリッヒ、カーク・ハメットの3人が共作し、メタリカの音楽性を象徴する一曲として、今もなお多くのファンに愛されています。

楽曲の誕生と特徴

この楽曲は、カーク・ハメットがサウンドガーデンのアルバムに触発されて作ったギターリフが基になっています。当初、ハメット自身はさほど気に留めていませんでしたが、ラーズ・ウルリッヒの「最初のパートを4回繰り返してみてはどうか」という提案により、あの特徴的なリフが完成しました。

歌詞は、タイトルにもあるように「サンドマン」が登場するファンタジックな内容です。メタリカの楽曲としては珍しいテーマですが、当初は乳幼児突然死をテーマにしたものでした。バンドやマネージメントは、プロデューサーのボブ・ロックを通じて、ジェイムズ・ヘットフィールドに歌詞を緩和するように頼んだそうです。曲中には、ジェイムズ・ヘットフィールドとボブ・ロックの息子による祈りの文句が挿入されています。

リリースと反響

シングルのB面には、クイーンのカバー「ストーン・コールド・クレイジー」が収録されました。このカバーは、元々、本シングルに先行してリリースされたオムニバスアルバムに収録されていたものです。12インチシングルには、「ホゥリアー・ザン・ザウ」の未完成バージョンと「エンター・サンドマン」のデモバージョンも収録されました。また、本作からウェイン・アイシャムがメタリカのミュージックビデオを監督するようになりました。

この楽曲は、アメリカのBillboard Hot 100で16位、メインストリームロックチャートで10位に達し、RIAAによってゴールドディスクに認定されました。デジタル部門では、プラチナ認定も獲得しています。イギリスでは、全英シングルチャートで5位にランクインし、バンド初のトップ10入りを果たしました。ノルウェーでは、1991年に8週連続でトップ10入りし、最高2位を記録、2007年にも再びチャートインして8位を記録するなど、非常に大きな反響がありました。

音楽的な評価

「エンター・サンドマン」は、第34回グラミー賞で最優秀ロックソング賞にノミネートされました。音楽評論家のクリス・トゥルーは、オールミュージックにおいて「カーク・ハメットが即興で書いたイントロは、メタリカの最高の瞬間の一つであり、世界的に認知されている」と評し、「発表されるや否や、この曲自体が独り歩きし、メタルのみならず広い意味でのロックにおいて、時代を超えて認められる曲となった」と述べています。

この曲は、様々なランキングでも高い評価を受けています。VH1の「90年代の最も偉大な100曲」では18位に、イギリスのラジオ局Rock Radioの「トップ500ソング・オブ・オール・タイム」では1位に輝いています。また、ギブソン公式サイトの「トップ50メタルソング」で18位、ローリングストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では390位にランクインしています。

大衆文化における使用例

「エンター・サンドマン」は、ゲームやスポーツ、テレビ番組など、様々な場面で使用されています。例えば、音楽ゲーム「ロックバンド」で使用されたり、ニューヨーク・ヤンキースのマリアノ・リベラの登場曲として知られています。リベラ自身が選んだわけではありませんが、ヤンキースタジアムの音楽係が選曲したことがきっかけで、この曲が彼の代名詞となりました。2013年には、リベラを称える式典でメタリカがライブ演奏を行い、その直後には安倍晋三首相が演説でこのことに触れるなど、話題を呼びました。

プロレスラーのサンドマンは、ECW時代に入場テーマとしてこの楽曲を使用していました。また、バージニア工科大学のスポーツチームは、試合前にこの曲を流し、観客が飛び跳ねるのが恒例となっています。さらに、日本のテレビ番組「タモリ倶楽部」のコーナー「空耳アワー」では、「千代田生命に行こう」と聞こえる空耳ネタとして紹介されました。

数多くのカバー

「エンター・サンドマン」は、様々なアーティストによってカバーされています。アル・ヤンコビック、ディ・クルップス、アポカリプティカ、パット・ブーン、モーターヘッド、セパルトゥラ、リチャード・チーズ、ポール・ヤング、ビータリカ、POLYSICSなど、ジャンルを超えた多くのミュージシャンがこの曲を独自の解釈で演奏しています。

「エンター・サンドマン」は、メタリカの代表曲としてだけでなく、音楽史に残る名曲として、今後も長く語り継がれることでしょう。

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