エンツォ・トラヴェルソ

エンツォ・トラヴェルソ（Enzo Traverso、1957年10月14日-）は、イタリア出身でフランス在住の歴史学者であり、ドイツ現代史、特にホロコーストや全体主義の研究を専門としています。

ピエモンテ州ガヴィで生まれたトラヴェルソは、ジェノバ大学を卒業後、1985年にフランスへ移住し、ピカルディ大学およびパリ社会科学高等研究院で教鞭を執っています。

彼の著作は多岐にわたり、マルクス主義とユダヤ問題、ユダヤ人とドイツの関係、アウシュヴィッツと知識人、全体主義、ヨーロッパの内戦、そして現代におけるポピュリズムとファシズムなど、20世紀の重要なテーマを扱っています。以下に代表的な著作を挙げます。

『マルクス主義者とユダヤ問題―ある論争の歴史(1843-1943年)』 宇京頼三訳、人文書院、2000年
『ユダヤ人とドイツ―「ユダヤ・ドイツの共生」からアウシュヴィッツの記憶まで』 宇京頼三訳、法政大学出版局、1996年 (叢書・ウニベルシタス)
『アウシュヴィッツと知識人―歴史の断絶を考える』 宇京頼三訳、岩波書店、2002年
『全体主義』 柱本元彦訳、平凡社新書、2010年
『ヨーロッパの内戦　炎と血の時代一九一四－一九四五年』 宇京頼三訳、未來社、2018年
『左翼のメランコリー　隠された伝統の力』 宇京頼三訳、法政大学出版局、2018年
『ポピュリズムとファシズム　21世紀の全体主義のゆくえ』 湯川順夫訳、作品社、2021年 - 英語版での出版
『一人称の過去　歴史記述における〈私〉』 宇京頼三訳、未來社、2022年6月

トラヴェルソの研究は、単なる歴史的事実の記述に留まらず、歴史の解釈、記憶、そして政治との関わりを深く掘り下げています。特に、ホロコーストをヨーロッパ史における特異点として捉え、その歴史的、思想的背景を分析することで、現代社会における全体主義やファシズムの再燃に対する警鐘を鳴らしています。

また、彼は歴史記述における主観性の問題にも積極的に取り組み、『一人称の過去』では、歴史家自身の経験や視点が歴史叙述に与える影響について考察しています。彼の著作は、歴史学研究だけでなく、社会学、政治学、思想研究においても重要な貢献を果たしており、20世紀の歴史と現代社会を理解するための貴重な視点を提供しています。

エンツォ・トラヴェルソは、現代社会における歴史の役割を問い続け、過去の過ちから学び、より良い未来を築くための知的な道標を示唆し続けています。

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