エヴェン

エヴェンの人々：ロシア極東のツングース系[[民族]]

エヴェン人（エヴェン語：эвэ̇н）は、ロシア連邦の東シベリア北部、主にサハ共和国、マガダン州、ハバロフスク地方東北部、カムチャツカ地方北部・中部、そしてチュクチ自治管区に居住するツングース系[[民族]]です。かつてはラムート人と呼ばれていましたが、ソ連時代になって「エヴェン」という名称が公式に採用されました。

エヴェン人の人口の大半はサハ共和国に集中しており、日常会話ではサハ語も多く用いられています。隣接するエヴェンキ人と文化的な共通点が多く、歴史的には両者がまとめて「ツングース人」と呼ばれることもありました。

生活様式と生業

エヴェン人の居住地域は大きく分けて、オホーツク海や北極海の沿岸部、そしてカムチャツカ半島やヤクーチアの北部山岳地帯の2つに分類できます。

沿岸部に居住するエヴェン人は、海獣狩猟や漁業を基盤とした定住生活を送っています。豊かな海洋資源を活かし、独自の伝統的な狩猟技術と漁撈技術を駆使して生活を営んできました。一方、山岳地帯に住むエヴェン人は、トナカイの遊牧を主な生業としています。広大な範囲を移動しながらトナカイの群れと共に生活し、厳しい自然環境に適応した独自の遊牧文化を築き上げてきました。

近年では、ロシア人との混血が進んでいる地域も見られます。伝統的な生活様式を維持しながらも、現代社会の変化に対応していく中で、新たな文化の融合が進んでおり、複雑な社会構造が形成されつつあります。

遺伝子と歴史

エヴェン人のY染色体ハプログループの分析では、C2が74.2%、Nが12.9%を占めていることが分かっています。これは、彼らの祖先がシベリア地域に長期間居住してきたことを示唆しています。17世紀以降、ロシアの影響下で歴史を歩んできたエヴェン人は、独自の文化とアイデンティティを維持しながら、現代社会に適応しようと努力を続けてきました。

民族自称は地域によって異なり、「エヴェン」の他に「オロル」など複数の呼称が存在します。ソ連時代には「エヴェン」が公式民族名として統一されましたが、それぞれの地域における独自の文化や伝統は、現在もなお大切に受け継がれています。

エヴェン文化の現状と課題

現代のエヴェン人は、伝統的な生活様式と現代社会の狭間で生活しています。都市部への移住や、伝統的な生業からの離脱など、様々な変化が起きています。伝統文化の継承と現代社会への適応という課題に直面しながら、独自のアイデンティティを維持し、発展させていくことが求められています。

エヴェン人の文化と歴史を理解することは、ロシア極東地域の多様な文化を知る上で非常に重要です。彼らの伝統と現代社会のバランス、そして将来への展望を探ることで、より深く理解を深めることができます。 今後も、エヴェンの人々の文化と歴史が、次世代に受け継がれていくことを願っています。

参考文献

綾部恒雄『世界民族辞典』弘文堂、2000年
加藤九祚『北東アジアの民族学史の研究』恒文社、1986年
* 朝克（丸山宏・上野稔弘編訳）東北アジア研究シリーズ③『ツングースの民族と言語』東北アジア研究センター、2002年

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