エーゲリア

エーゲリアの概要

エーゲリア（古希: Ηγερία 羅: Egeria）は、ローマの神話において重要な役割を果たす水のニュンペーです。特に、ローマの第2代王であるヌマ・ポンピリウスの妻および助言者として知られています。エーゲリアの名称は「黒いポプラ」を意味する言葉から派生したとも言われています。

エーゲリアと聖なる木立ち

エーゲリアが神聖であるとされた場所には、木々が生い茂り、そこに水やミルクを捧げることで知恵と予言を託されると考えられていました。この神域近くには、後に3世紀にカラカラ浴場が建設されます。ローマ人はエーゲリアを、ギリシア神話のディアーナと結びつけ、妊婦が出産時にその名を呼ぶことで助けを求めることが習慣となっていました。このことは、ギリシア神話のエイレイテュイアとアルテミスの関係に類似しています。

カメーナとエーゲリア

さらに、ローマ人はエーゲリアをカメーナの一柱として見なしました。カメーナはギリシャ神話のムーサに対応する神々で、文化的にはギリシアに強い影響を受けたローマにおいて、エーゲリアの重要性は増していきました。ハリカルナッソスのディオニューシオスにおいても、彼女はムーサの一柱として位置付けられました。

アリーキアの神話

エーゲリアはローマ神話の登場以前から崇拝されていた可能性があります。ラティウムのアリーキアには、古代から神聖視された森があり、そこがエーゲリア信仰の起源であると見なされています。この森は、Diana Nemorensis（ディアーナ・ネモレーンシス）の森とも同一視されています。アリーキアでは、エーゲリアに対する男神、マーニウス・エーゲリウスも崇拝の対象でした。

伝説によれば、エーゲリアはヌマ・ポンピリウスのニュンペーとして夫婦の関係にありました。彼女は神聖な木立ちでヌマに会い、ローマの宗教的原則を教えたと言われています。ヌマの死後、エーゲリアは泉に姿を変えた伝説も残されています。

ローマのエーゲリア

ヌマ・ポンピリウスとエーゲリアが会った神聖な木立ちは、セルウィウス城壁のカペーナ門の近くに位置していました。紀元2世紀には、ヘーローデース・アッティクスがこの地にウィッラを建設し、エーゲリアの像を配置した場所も含まれています。この場所は「Ninfeo d'Egeria」と呼ばれ、様々な装飾が施されています。また、周囲の泉から水を引き入れた健康の湖（Lacus Salutaris）が作られました。

ユウェナーリスは、その当時におけるエーゲリアの人工的な装飾に対して嘆きの詩を詠みました。エーゲリアの泉は19世紀のローマで人気のピクニックスポットとなり、現在もアッピウス街道とラティーヌス街道に挟まれたアッピア・アンティーカ公園内にその存在が見られます。

古典作品におけるエーゲリア

エーゲリアは文学作品にも登場しています。例えば、ナサニエル・リーの悲劇『ルキウス・ユニウス・ブルトゥス』（1680年）では、エーゲリアがブルートゥスの息子の前に現れる幻想的な存在として描かれています。また、オスカー・ワイルドの喜劇『真面目が肝心』では、チャジュブル博士が家庭教師を「エゲリア」と呼ぶ場面もあります。

エーゲリアの神話や象徴は、ローマの文化や宗教において重要な位置を占めており、古代ローマ人にとって不可欠な存在であったことがわかります。

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