エーベルハルト・シェーラー

ハンス・エーベルハルト・シェーラー：鉄壁のカットで世界を魅了した卓球選手

ハンス・エーベルハルト・シェーラー（Hans Eberhard Schöler, 1940年12月22日 - ）は、ドイツ（西ドイツ）出身の卓球選手です。その冷静沈着で忍耐強いプレースタイルから「ミスター・ポーカーフェイス」の異名を取り、1960年代から1970年代にかけて、カット主戦型として世界の舞台で活躍しました。

生い立ちと卓球との出会い

1940年、西プロイセンのフラトヴ（現在のポーランド北西部ズウォトゥフ）に生まれたシェーラーは、ケルン大学で経営経済学を学びました。その後、ガラスブロックを商う事業に携わる傍ら、13歳から卓球を始めます。TTCシュヴァルツ＝ヴァイス37デュッセルドルフでのプレーを経て、1957年にDJKトゥーザ06デュッセルドルフに入団し、競技者としてのキャリアをスタートさせました。

国際舞台での活躍

1960年、ロッテルダムの大会で国際大会デビューを飾ると、1962年のヨーロッパ卓球選手権西ベルリン大会では、男子シングルスで3位、男子ダブルスで3位、混合ダブルスで2位、男子団体で3位と、数々の好成績を収めます。翌1963年の世界卓球選手権プラハ大会では、男子団体のメンバーとして3位入賞を果たし、この大会では、当時の中国のトップ選手であった荘則棟や徐寅生を破るという快挙を成し遂げました。

1965年の世界卓球選手権リュブリャナ大会では、男子シングルスでハンス・アルセア（スウェーデン）、エドヴァルド・ヴェツコ（ユーゴスラヴィア）らを破り、準々決勝に進出。準々決勝では、世界ランク3位の張燮林（中国）と対戦しました。カット主戦型同士の対決となったこの試合は、2時間にも及ぶ激闘となり、最終的にシェーラーが勝利を収めました。しかし、この試合で消耗し切ったシェーラーは、準決勝で荘則棟にストレートで敗れました。

1969年の世界卓球選手権ミュンヘン大会では、男子シングルスでヤロスラフ・スタニェク（チェコスロバキア）、田阪登紀夫（日本）らを破り決勝に進出。決勝では伊藤繁雄（日本）に敗れ2位に終わりましたが、カットマンとして世界選手権男子シングルス決勝に進出したことは、特筆すべき功績として記憶されています。

プレースタイル

シェーラーは、シェークハンドのカット主戦型で、粘り強いカットと、ここぞという時の攻撃を織り交ぜたプレースタイルが特徴です。特に、促進ルールに入るとその強さを発揮し、レシーバー時に粘り強くボールをつないで得点を重ねました。

また、「相手より先にミスをしない」という徹底した守備的戦術を信条とし、体力の消耗を極力抑えた小さなスイングのカットを基本としていました。しかし、そのカットはコンパクトなフォームからは想像できないほど重く、対戦相手を苦しめました。攻撃においては、ショートストロークの強打を基本としていましたが、手首をうまく使い、前に大きく踏み込みながら打つことで、十分な威力を発揮していました。後陣から猛然とダッシュしてきて小さなスイングの強打でストップを狙い打つさまは「シェーラーの鞭」(Schöler-Peitsche)と呼ばれ、観客を魅了しました。

引退後の活動

1974年に国際大会から引退後も、シェーラーは国際卓球連盟理事、ヨーロッパ卓球連盟副会長など、数々の要職を歴任し、卓球界の発展に尽力しました。また、卓球用品の通信販売事業も手がけ、その事業は現在も「シェーラー・ウント・ミッケ (Schöler&Micke)」として存続しています。

2009年にはドイツ連邦共和国功労十字小綬章を受章、2011年にはドイツスポーツ殿堂入りを果たし、その功績は広く称えられています。

ハンス・エーベルハルト・シェーラーは、その卓越した技術と精神力で、卓球界に多大な影響を与えた偉大な選手です。彼のプレースタイルは、多くのカットマンにとって模範となり、その功績は永遠に語り継がれるでしょう。

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