オオウナギ

オオウナギ（大鰻）

オオウナギ（学名: Anguilla marmorata）は、ウナギ目ウナギ科に属する大型の魚です。和名が示す通り、ニホンウナギよりも大きくなることで知られています。ニホンウナギの大型個体を「大鰻」と呼ぶこともありますが、オオウナギはニホンウナギとは異なる種です。熱帯性の傾向が強く、遺伝子解析では複数の繁殖集団の存在が示唆されています。また、繁殖集団ごとに異なる産卵場所を持つと考えられています。

特徴

オオウナギは、最大で全長2m、体重20kgに達することがあります。体色は、背中側が黄褐色地に黒褐色のまだら模様、腹側は黄白色をしています。若い個体は細長い体型をしていますが、大型個体になると胴の直径が20cm以上と太く、まるで丸太のようになります。若い個体は体表のまだら模様によってニホンウナギと区別できますが、個体によっては模様が薄く、見分けが難しい場合もあります。また、同じくまだら模様を持つタウナギとは、胸びれの有無や模様の形状によって区別できます。

分布と生息環境

オオウナギは、太平洋とインド洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布しており、ウナギ科の中で最も広い分布域を持ちます。日本では、利根川以西、長崎県以南の暖流に面した地域に生息地が点在しています。特に南西諸島では、ニホンウナギよりも普通種であり、1mを超える個体も珍しくありません。奄美大島や沖縄本島では、1.5mを超える個体も確認されています。

オオウナギは、川の流れが緩やかな場所や湖、池、マングローブなどに生息しています。日中は岩や植物の隙間に隠れて休み、夜になると泳ぎ出て獲物を探します。雨の日には、若い個体が水場を抜け出し、上流など他の水場へ移動することもあります。短時間であれば皮膚呼吸が可能であるため、水辺の岸や泥地の上で捕食行動をすることもあります。

食性

オオウナギは肉食性で、ミミズ、ヒル、甲殻類、小魚、昆虫、カエル、ネズミ、ヘビ、小型の鳥類など、様々なものを丸呑みにします。特にカニ、エビ、ザリガニなどの甲殻類を好むため、地方によっては「カニクイ」と呼ばれることもあります。

繁殖

繁殖期になると川を下り、外洋の深海で産卵を行います。孵化した稚魚はレプトケファルスと呼ばれる形態で、半年ほど外洋を漂いながら成長し、全長5cmほどのシラスウナギとなって各地の海岸に現れ、川を遡上します。寿命は40年という記録があります。

利用

鹿児島県南部や南西諸島、台湾、中国広東省、香港、ベトナムなどでは、食用や強壮剤として利用されています。中国や香港では、ニホンウナギよりも栄養や強壮効果が高いと信じられていますが、科学的な根拠は不明です。食味に関しては、ウナギよりも硬く淡白であるため、煮込み料理として調理されることが多いです。

別名

地域によって様々な別名があり、高知県では「ゴマウナギ」、九州では「アカウナギ」、その他、「カニクイ」「カニクイウナギ」などと呼ばれています。中国語圏では、中国で「花鰻鱺」、台湾で「鱸鰻烏耳鰻」、香港で「花錦鳝」といった名前で呼ばれています。

天然記念物

オオウナギは熱帯性の種であるため、九州以北ではあまり見ることがありません。環境省のレッドリストには記載されていませんが、生息地は各地で天然記念物に指定されています。

主な指定地域

和歌山県田辺市・白浜町富田川流域（国指定）
徳島県海陽町母川流域（国指定）
長崎県長崎市樺島（国指定）
千葉県館山市佐野川流域（市指定）
鹿児島県指宿市池田湖（市指定）

特に、長崎県長崎市樺島では、井戸に住むオオウナギが有名で、過去には「うな太郎」という愛称で親しまれた個体もいました。また、池田湖では、未確認生物「イッシー」の正体としてオオウナギが挙げられることもあります。これらの地域以外にも、多くの県や市町村で天然記念物に指定されており、捕獲には注意が必要です。

参考文献

山と溪谷社「山溪カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚」
山海堂 フィールド総合図鑑「川の生物」

関連項目

ウナギ
* タウナギ

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