オオヤマザクラ

オオヤマザクラ（大山桜）

オオヤマザクラ（学名: Cerasus sargentii var. sargentii）は、バラ科サクラ属の落葉高木であり、冷涼な地域に自生する代表的な桜です。別名として、エゾヤマザクラ、ベニヤマザクラとも呼ばれ、その美しい姿は多くの人々を魅了します。

名称の由来

オオヤマザクラの名前は、ヤマザクラに比べて花が大きいことに由来します。また、花色がヤマザクラよりも濃い紅色であることからベニヤマザクラ、北海道に多く生育していることからエゾヤマザクラとも呼ばれます。アイヌ語では「カリンパニ」と呼ばれ、英語圏では「Sargent's cherry」として知られています。この英名は、アメリカの植物学者チャールズ・スプレイグ・サージェントにちなんでいます。

分布

オオヤマザクラは、東アジアの冷温帯を中心に分布しており、日本では北海道、本州、四国（主に日本海側）に自生しています。国外では、南千島、樺太、中国、朝鮮半島、ロシア沿海州などにも分布しています。特に、ヤマザクラよりも標高の高い場所を好む傾向があります。

変種として、オオヤマザクラ（var. sargentii）とキリタチヤマザクラ（var. akimotoi）があり、キリタチヤマザクラは九州の宮崎県五ヶ瀬町の白岩山周辺にのみ分布する希少な桜です。

特徴

樹形: 樹高は10 - 20メートルに達し、広卵状の樹形をしています。
樹皮: 暗紫褐色で、やや栗色がかっています。小枝は紫褐色で、灰褐色のヤマザクラとは異なります。
花: 花期は4 - 5月で、直径3 - 4.5センチメートルの中輪から大輪の花を咲かせます。花弁は濃い紅色で、5枚あります。
葉: 葉は花とほぼ同時に展開し、若葉は赤い色をしています。葉の大きさは8 - 15センチメートルの長卵型で、ヤマザクラよりも大きく、成木では裏面が白色を帯びています。
果実: 果実は直径1センチメートルほどの球形で、熟すと紫黒色になります。鳥が好んで食べますが、人間にとっては小さく、食用にはされていません。
冬芽: 卵形や長卵形の栗褐色をした鱗芽で、粘りがあります。

利用

オオヤマザクラは、寒さに強いため、北海道や東北地方を中心に鑑賞用や街路樹として広く植えられています。紅葉も美しく、関東以北ではヤマザクラよりも好まれる傾向があります。また、海外でも同様に利用されており、アメリカやイギリスには1908年に導入されました。気象庁の桜の開花予想の標本木として、北海道の一部地域で使用されています。

オオヤマザクラには、ケオオヤマザクラ、アカツキザクラ、シダレオオヤマザクラなどの品種があります。

名所

オオヤマザクラは北海道を代表する桜であり、各地に名所があります。

二十間道路桜並木（北海道新ひだか町）: 約7キロメートルにわたり、約3000本の桜が咲き誇る名所。「日本のさくら名所100選」にも選ばれています。
国泰寺・子野日公園（北海道厚岸町）: 樹齢170年を超える老桜樹や約1200本のオオヤマザクラが楽しめます。
世界一の桜並木（青森県弘前市）: 総延長20キロメートルにわたり、約6500本の桜が植えられています。
亀ヶ森牧場の一本桜（岩手県宮古市）: 標高800メートルの高台に立つ一本桜。
西蔵王のオオヤマザクラ（山形県山形市）: 西蔵王高原に自生するオオヤマザクラ群。
針山の天王ザクラ（群馬県） 見事な枝ぶりの巨木。
極楽寺の野中ザクラ（新潟県阿賀町）: 天然変形したオオヤマザクラ。
地蔵久保のオオヤマザクラ（長野県飯綱町）: 樹齢130年の巨木。
* 桜峠（福島県北塩原村）: 約3000本のオオヤマザクラが植えられた桜の名所。

これらの場所では、オオヤマザクラの美しい花を楽しむことができます。

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