オクモミジハグマ

オクモミジハグマ（奥紅葉白熊）

オクモミジハグマ（学名：Ainsliaea acerifolia var. subapoda）は、キク科モミジハグマ属の多年草であり、モミジハグマ（Ainsliaea acerifolia）を基本種とする変種です。その名の通り、紅葉のような葉の形と、白い花を咲かせる姿が特徴的です。

特徴

地下茎: 地下茎をもち、地中を横に這うように広がります。
茎: 茎は直立し、高さは40cmから80cm程度に成長し、まばらに長毛が生えています。
葉: 茎の中部に4枚から7枚程度の葉が輪生状につきます。葉柄は長さ5cmから13cmで、葉身は腎心形または円心形をしており、大きさは6cmから12cm、幅は6cmから18cm程度です。葉の縁は掌状に7つに浅くから中程度に裂け、鋸歯があります。葉の両面にはまばらに軟毛が生えています。モミジハグマと比べると、葉の切れ込みが浅いのが特徴です。
花期: 花期は8月から10月にかけてで、頭状花序が穂状に多数つきます。開花時には花が横向きになり、花柄は長さ約2mmで、小さな苞があります。総苞は細い筒状で、長さは12mmから15mm程度です。総苞片は多数が瓦状に並び、乾いた膜質で、外片はごく短い広卵形、内片は長く幅2mmから3mmの長楕円形をしています。頭花は3個の筒状花からなり、花冠は白色で、4つから5つに裂け、左右相称で、裂片は線形でよじれます。
果実: 果実は長さ9.5mm、幅2mm程度の無毛の痩果で、上端には長さ11mm程度の羽毛状の冠毛があります。

分布と生育環境

オクモミジハグマは、日本では本州（中部地方から西側の日本海側）と九州北部に分布し、山地の木陰に生育します。国外では、朝鮮半島や中国にも分布しています。

基本種であるモミジハグマは、本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州に分布し、深山の木陰に生育します。オクモミジハグマと比較して、葉がより深く切れ込む点が異なります。

和名の由来

オクモミジハグマの名前は、「奥紅葉白熊」に由来します。「紅葉」は、葉の形がカエデ（モミジ）に似ていることから、「奥」は、基本種のモミジハグマよりも北に分布することから名付けられました。また、「白熊（はぐま）」とは、ヤクの尾の毛でつくった槍や兜、僧侶の払子の飾りを指し、花冠の細長い裂片の様子を白熊に見立てたものです。

オクモミジハグマは、ひっそりと咲くその姿に、奥ゆかしさを感じさせる植物です。山を訪れた際には、ぜひ探してみてください。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本III合弁花類』、1981年、平凡社
高橋勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 秋・冬』、2003年、山と溪谷社
牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

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