オグロシギ

オグロシギ（尾黒鷸）

オグロシギは、チドリ目シギ科オグロシギ属に分類される鳥類で、学名は Limosa limosa です。和名の由来は、その名の通り尾羽が黒いことに由来します。ユーラシア大陸の中部から北部で繁殖し、冬はアフリカ、インド、オーストラリアなどで越冬する渡り鳥です。

分布

オグロシギは、繁殖期にはユーラシア大陸の中部から北部にかけて広く分布しています。越冬地は、アフリカ、インド、オーストラリアなど、広範囲に及びます。日本では、春と秋の渡りの時期に、北海道から沖縄まで各地に旅鳥として飛来しますが、その数はあまり多くありません。特に秋の飛来数が多い傾向があります。

形態

オグロシギの全長は約38cm、翼開長は約67cmです。雌の方が雄よりもわずかに体が大きいです。雄の成鳥の夏羽は、頭部から胸にかけて赤褐色で、頭頂から後頸にかけて黒い縦斑があります。顔には白い眉斑があり、体の下面は白く、赤褐色と黒褐色の横斑が見られます。上尾筒は白色で、尾羽は黒色をしており、飛翔時にはこの黒い尾羽がよく目立ちます。雌の夏羽は、雄に比べて全体的に淡い色をしています。成鳥の冬羽は、頭部から胸にかけてと体の上面が灰褐色になります。

生態

オグロシギは、渡りの時期には水田、湿地、干潟、河口などの水辺に生息します。多くは小群で行動することが観察されます。繁殖期には、湿地や湖沼の岸辺の草地などを生息地とし、小さなコロニーを形成することもあります。食性は動物食で、昆虫類、貝類、ミミズ、ゴカイなどを捕食します。

繁殖形態は卵生で、繁殖時期は4月から7月です。地上に窪みを掘って巣を作り、通常4卵を産みます。抱卵日数は21日から23日です。鳴き声は小さくこもった声で、「ケッ」や「キッ」と一回または数回続けて鳴きます。

2007年の調査では、アラスカからニュージーランドまでの1万1500キロを平均時速56キロで、約9日間かけて飛び続けることがわかっています。

分類

オグロシギ属には、以下の種が含まれます。

Limosa fedoa
Limosa haemastica （アメリカオグロシギ）
Limosa lapponica （オオソリハシシギ）
Limosa limosa （オグロシギ）

オグロシギは、以下の3亜種に分類されています。

L. limosa islandica
デンマークのフェロー諸島、スコットランドのシェトランド諸島、ノルウェーのロフォーテン諸島、アイスランドで繁殖し、フランスなどで越冬します。
L. limosa limosa
西ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、中央アジア、ロシアまでの広い範囲で繁殖し、フランスとイベリア半島を経由して西アフリカで越冬します。
L. limosa melanuroides
モンゴル、中国北部、ロシア東部で繁殖し、地中海のサハラ以南のアフリカ、中東、インド、インドシナ、台湾、フィリピン、インドネシア、オーストラリアで越冬します。一部が旅鳥として日本を経由します。

種の保全状況評価

国際自然保護連合（IUCN）により、準絶滅危惧（NT）に指定されています。日本では、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けています。

絶滅危惧IB類：東京都（区部、北多摩と南多摩は絶滅危惧II類）
絶滅危惧II類：神奈川県、静岡県、愛知県
絶滅危惧種：京都府（環境省の絶滅危惧II類相当）
Bランク：兵庫県（環境省の絶滅危惧II類相当）
準絶滅危惧：大阪府、徳島県、福岡県
希少野生生物（Cランク）：青森県（環境省の準絶滅危惧相当）
希少種：滋賀県（環境省の準絶滅危惧相当）

参考文献

真木広造他　『日本の野鳥590』、平凡社、2000年
高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥』山と溪谷社、2002年
叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7　日本の野鳥』（第2版）山と溪谷社、2006年
中川雄三（監修） 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年

関連項目

シギ
アメリカオグロシギ
* 日本の野鳥一覧

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