オスカル・モンテリウス

グスタフ・オスカル・アウグスティン・モンテリウス：考古学に科学的基礎を築いた巨人

グスタフ・オスカル・アウグスティン・モンテリウス（1843年9月9日 - 1921年11月4日）は、スウェーデンが生んだ傑出した考古学者です。彼は考古資料の編年と相対年代の決定に重要な足跡を残し、特に型式学的研究法の提唱は、世界中の考古学研究に大きな影響を与えました。

生涯

1843年、ストックホルムで生まれたモンテリウスは、幼い頃から人類学と先史考古学に強い関心を抱いていました。ウプサラ大学で歴史学を修めた後、1863年にスウェーデン国立歴史博物館の助手となり、研究生活をスタートさせます。1869年には博士号を取得し、1871年には博物館員となりました。ハインリヒ・シュリーマンによるトロイア遺跡の発掘に触発され、青銅器時代と鉄器時代の研究に情熱を注ぎました。1880年には国立歴史博物館の教授に昇進し、1907年には館長兼国家古物管理官に就任。スウェーデンの文化財保護に尽力しました。1913年に引退後も、スウェーデン・アカデミー会員として活動を続け、1921年にその生涯を閉じました。亡命ロシアの歴史家ミハイル・ロストフツェフを支援したことでも知られています。

業績：型式学的研究法の確立

モンテリウスの最大の功績は、型式学的研究法を確立したことです。この研究法は、遺物の形態、材料、技法、装飾などの特徴に基づいて分類し、その変遷をたどることで、遺物の時間的・空間的な位置関係を明らかにするものです。チャールズ・ダーウィンの進化論に影響を受け、技術的・社会的制約の中で遺物が一定の法則に従って変化するという認識に基づいていました。

彼は、遺物の形態変化だけでなく、各段階で決まった遺物の組み合わせ（一括遺物）があることを指摘し、遺跡の層位学的研究と組み合わせることで、相対年代の確立を目指しました。彼は、北欧の留め針編年を4期に分け、遺物の系譜を「型式の組列（セーリエ）」と名付けました。この手法を厳密に適用することで、ヨーロッパの青銅器時代を6期、新石器時代を4期、鉄器時代を10期に細分化することに成功しました。

考古学への貢献

モンテリウスの研究方法は「モンテリウス考古学」と称され、考古学研究に科学的な基礎を与えるものとして高く評価されました。この研究法の確立によって、考古学は文献史学とは異なる独自の方法論を持つ独立した学問領域となり、現代につながる考古学の基礎が築かれました。彼の研究は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパ全域に広がり、大きな影響を与えました。

著作とその影響

モンテリウスは多くの著作を残しましたが、中でも『オリエントとヨーロッパにおける古代文明期』は彼の研究方法をまとめた重要な著作です。この著作は、1932年に浜田耕作によって『考古学研究法』として翻訳され、日本考古学研究の基礎的方法論の一つとなりました。

まとめ

グスタフ・オスカル・アウグスティン・モンテリウスは、型式学的研究法を確立し、考古学研究に科学的な基礎を築いた偉大な考古学者です。彼の業績は、現代の考古学研究においても重要な基盤となっており、その影響は計り知れません。

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