オスカル・ロレンソ・フェルナンデス

オスカル・ロレンソ・フェルナンデス（Oscar Lorenzo Fernández, 1897年11月4日 – 1948年8月27日）は、20世紀ブラジルを代表する作曲家であり、教育者としても重要な役割を果たした人物です。リオデジャネイロに生まれた彼は、幼い頃から音楽への才能を示し、後に国立音楽院で専門的な教育を受けました。ここでは、高名な音楽家たち、とりわけフェデリコ・ナシメントやエンリキ・オスワルドといった師事した教師陣から、作曲技法や音楽理論に関する深い知識を習得しました。

音楽院での学生時代を経て、フェルナンデスは教育の道にも足を踏み入れます。1923年、師であったナシメントの病気療養に伴い、彼は和声のクラスを臨時に担当することになりました。この代役としての経験が、彼の教育者としてのキャリアの始まりとなります。生徒からの信頼も厚く、その指導力は高く評価され、わずか2年後の1925年には、国立音楽院の和声科における専任教授に正式に就任しました。教育への情熱は止まることなく、彼はさらに積極的に活動を展開します。1936年には、自身の理想とする音楽教育を実現するため、リオデジャネイロにブラジル音楽院を創設しました。この音楽院では、亡くなるまでの間、多くの若い音楽家たちを指導し、ブラジルの音楽界の発展に大きく貢献しました。

作曲家としてのフェルナンデスは、ブラジルの豊かな文化や民族音楽に根ざした国民楽派のスタイルを追求しました。彼の作品の中でも、特に重要な位置を占めるのが、1931年から1933年にかけて作曲された3幕のオペラ『マラサルテ』です。このオペラは、ブラジルの民話や風習を題材にした国民的な内容が高く評価され、ブラジルで初めて成功を収めたオペラ作品として語り継がれています。その音楽的な魅力は広く認知され、1941年には、このオペラから主要な旋律や場面を抜粋し、3楽章構成の管弦楽組曲として再構成しました。この組曲は単独でも演奏される機会が多く、特に終楽章に置かれた『バトゥーキ』（Batucada）は、リオのカーニバルを彷彿とさせるような熱狂的なリズムと鮮やかなオーケストレーションで知られ、フェルナンデスを代表する楽曲として世界中で親しまれています。

『マラサルテ』以外にも、フェルナンデスは多岐にわたるジャンルで多くの作品を残しています。バレエ音楽、2つの交響曲、5つの交響詩といった大規模なオーケストラ作品をはじめ、2つの管弦楽組曲、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲といった協奏曲、さらには多様な室内楽曲や、約80曲に及ぶピアノ独奏曲、そして36曲の歌曲など、その作品リストは膨大です。これらの作品群を通じて、彼はブラジルの音楽語法を国際的なレベルに高め、同時代の他のブラジル人作曲家たちと共に、自国の音楽的アイデンティティ確立に寄与しました。作曲家、教育者双方の側面から、オスカル・ロレンソ・フェルナンデスはブラジル音楽史において欠くことのできない存在と言えます。

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