オットー・フロイントリッヒ

オットー・フロイントリッヒ：抽象絵画の先駆者、その生涯と作品

オットー・フロイントリッヒ（1878年7月10日 - 1943年3月9日または3月10日）は、ドイツの画家、彫刻家であり、抽象絵画の初期のパイオニアとして重要な人物です。彼の芸術的探求は、20世紀初頭の芸術界に大きな影響を与えましたが、その生涯はナチス政権による迫害によって悲劇的な結末を迎えました。

生涯

フロイントリッヒは、現在のポーランド領であるシュトルプで、船主の息子として生まれました。当初は学業を中断し、商人見習いとして働いていましたが、後に大学入学資格を取得し、歯科学を学び始めます。しかし、1902年に芸術への情熱に目覚め、ミュンヘンやベルリンで音楽理論や哲学を学びながら、芸術の道を志すことになります。

1906年末からイタリアのフィレンツェを訪れた際、自らの彫刻と絵画の才能に気づき、ベルリンに戻って本格的に美術を学び始めました。ローター・フォン・クノフスキやロヴィス・コリントに絵画を、アルトゥール・レヴィン＝フンケに彫刻を師事し、技術を磨きました。

1908年にはパリに移り、モンマルトルの集合アトリエ「洗濯船」で、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックら、後のキュビスムを代表する芸術家たちと交流を深めます。1909年と1910年のベルリン分離派展、1912年のケルンでの「ゾンダーブント」展にも参加し、その才能を広く知らしめました。1911年には、初の抽象絵画を制作し、新たな芸術表現の可能性を追求し始めます。1913年にはベルリンで開催された「最初のドイツ秋季展」にも出展し、その前衛的な作風は注目を集めました。

第一次世界大戦勃発直前にドイツへ帰国。開戦後は医療兵として従軍しますが、1918年に除隊。その後、画家のハンス・ボルツと親交を深め、表現主義の美術家グループ「Novembergruppe」に参加。ヨハネス・テオドール・バールゲルトらベルリン・ダダの芸術家たちとも交流し、多様な芸術運動に関わりました。

1924年に再びパリへ移住。パリ、チューリッヒ、バーゼル、アムステルダム、ケルンなどで作品を発表し、1931年には芸術家グループ「アブストラクション・クレアシオン」に加入。抽象芸術の発展に貢献しました。

しかし、1933年にナチスがドイツで権力を掌握すると、フロイントリッヒの作品は「退廃芸術」とみなされ、美術館から排除されるなど、活動は著しく制限されました。

第二次世界大戦が勃発すると、フランスでドイツ人として抑留された後、釈放されるものの、ヴィシー政権下でユダヤ人として自宅軟禁を強いられます。アメリカへの亡命も失敗に終わり、1943年2月23日にドイツ軍に逮捕。パリ郊外の収容所へ収監後、約1,000人のユダヤ人と共にポーランドへ強制移送され、ルブリン強制収容所で命を落としました。正確な死亡日時は不明です。

作品と評価

フロイントリッヒの作品は、初期には具象的な要素も見られましたが、次第に抽象化が進み、色彩と幾何学的な形態を組み合わせた独自のスタイルを確立しました。彼の作品は、抽象絵画の発展に大きな影響を与えただけでなく、その芸術を通して、社会的なメッセージやユートピア思想を表現しようと試みました。

フロイントリッヒの作品は、現在、世界各地の美術館に収蔵されており、その芸術的遺産は高く評価されています。彼の生涯は、芸術の自由と人間の尊厳を求める闘いの象徴として、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

参考文献

Freundlich, Otto. In: Hans Vollmer (Hrsg.): Allgemeines Lexikon der bildenden Künstler des XX. Jahrhunderts. Band 2: E–J. E. A. Seemann, Leipzig 1955, S. 156.
Otto Freundlich. In: Hans Vollmer (Hrsg.): Allgemeines Lexikon der bildenden Künstler des XX. Jahrhunderts. Band 5: V–Z. Nachträge: A–G. E. A. Seemann, Leipzig 1961, S. 495–496.
Dörte Zbikowski: Freundlich, Otto. In: Allgemeines Künstlerlexikon. Die Bildenden Künstler aller Zeiten und Völker (AKL). Band 44, Saur, München u. a. 2005, ISBN 3-598-22784-1, S. 494–496.
Günter Aust: Otto Freundlich. DuMont Schauberg, Köln 1960.
Joachim Heusinger von Waldegg (Hrsg.): Otto Freundlich (1878–1943). Monographie mit Dokumentation und Werkverzeichnis. Ausstellungskatalog mit Beiträgen von Uli Bohnen, Joachim Heusinger von Waldegg, Andrèi B. Nakov. Drouin/Maillet/Kaniel, Bonn 1978, ISBN 3-7927-0413-7.
Joachim Heusinger von Waldegg: Otto Freundlich. Ascension. Anweisung zur Utopie. Fischer Kunststück, Frankfurt/M. 1987, ISBN 3-596-23943-5.
Musée départemental de Rochechouart / Association Les Amis de Jeanne et Otto Freundlich (Hrsg.): Otto Freundlich. Mit Beiträgen von Alain Bonfand, Christophe Duvivier, Edda Maillet, Jerôme Serri, Guy Tossato. Ausstellungskatalog Rochechouart 1988, ISBN 2-7291-0313-9.
Otto Freundlich et ses Amis. Ausstellungskatalog. Pontoise 1993.

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