オットー燃料II

オットー燃料IIについて

オットー燃料II（Otto fuel II）は、主に魚雷やその他の兵器システムで使用される特殊な一液系推進剤です。この名称は開発者オットー・ライトリンガーに由来しますが、オットーサイクルとは関連はありません。

特性

オットー燃料IIは独特な赤みがかったオレンジ色をした油状の液体です。その主成分であるプロピレングリコールジニトラートに、減感剤として使用されるセバシン酸ジブチルと安定剤の2-ニトロジフェニルアミンが加えられた3成分の混合物から構成されています。

この推進剤は加熱や気化によって反応が始まり、酸化剤を必要としません。この性質により、通常の状況下では爆発を起こす危険性は低く、実用上は安定しています。また、揮発性が低いため、気化して有毒性を示すことはありません。この特性は、狭い空間での使用に特に適しており、潜水艦などでの採用に向いています。魚雷の推進剤として使用する際は、そのエネルギー密度が高いため、長い射程を実現することが可能です。

主成分

オットー燃料IIの主成分であるプロピレングリコールジニトラート（PGDN）は、硝酸エステル系の爆薬です。この成分に加えられている減感剤と安定剤の役割についても触れておきます。具体的には、プロピレングリコールジニトラートの配合比率は76%、セバシン酸ジブチルが22.5%、2-ニトロジフェニルアミンが1.5%となっています。

19世紀半ばから、プロピレングリコールジニトラートを含むニトロ化合物は爆薬として広く利用されてきましたが、現在では狭心症の治療薬としても使われています。アメリカ海軍では、オットー燃料IIの安定剤として2-ニトロジフェニルアミンを使用しており、これはアメリカ陸軍の固体燃料ロケットの製造にも利用されています。また、民間の用途としては染色にも用いられています。

一方、減感剤のセバシン酸ジブチルは、様々なプラスチック可塑剤として知られています。これにより、酢酸酪酸セルロースや酢酸プロピオン酸セルロース、さらにポリビニルブチラール、ポリスチレン、各種の合成ゴムなど、多岐にわたるプラスチック製品に使われています。その他にも食品包装プラスチックや、シェービングローションの潤滑剤、飲料やアイスクリーム、キャンディ、焼き菓子に使われる香料など、さまざまな場面で利用されています。

毒性

オットー燃料IIについては、アメリカ合衆国環境保護庁（EPA）が定める全国浄化優先順位リストにおいて、有害廃棄物として指定されています。この物質によって汚染された食品を摂取したり、作業場で直接曝露された場合には、頭痛、めまい、呼吸困難などの健康問題が引き起こされる可能性があります。ただし、曝露による症例の報告は確認されていません。

用途

オットー燃料IIは、以下の魚雷で推進剤として採用されています：

• - Mk48
• - Mk46
• - スピアフィッシュ
• - Yu-6
• - 89式魚雷
• - 18式魚雷

これらの武器システムにおいては、高いエネルギー密度を活かした優れた推進性能が求められます。オットー燃料IIはその特性から、実用性と安全性を兼ね備えた重要な推進剤となっているのです。

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