オデッタ

オデッタ・ホームズ：公民権運動の歌声

オデッタ・ホームズ（1930年12月31日 - 2008年12月2日）は、「公民権運動の声」と称されたアフリカ系アメリカ人のフォーク歌手、女優、ギタリスト、作詞作曲家、そして人権活動家でした。その力強い歌声とメッセージは、多くの人々に勇気を与え、社会変革を訴えました。

生い立ちと音楽への目覚め

アラバマ州バーミングハムで生まれたオデッタは、幼少期をカリフォルニア州ロサンゼルスで過ごしました。ロサンゼルス・シティー・カレッジで音楽を学び、13歳からオペラのトレーニングを受けました。1944年からは、ハリウッドでエルザ・ランチェスターらとミュージカルのアンサンブル・メンバーとして4年間活動し、音楽の基礎を築きました。1949年には、ミュージカル『フィニアンの虹』の全米公演に参加し、舞台経験を積みました。

フォークシンガーとしての躍進

『フィニアンの虹』のツアー中にサンフランシスコで出会った若手バラード歌手グループとの交流をきっかけに、1950年以降はフォークソングを歌うようになりました。ニューヨークやサンフランシスコなど、アメリカ各地のナイトクラブで演奏を重ねるうちに、その才能は広く知られるようになりました。歌手ラリー・モーアとフォークデュオ「オデッタ&ラリー」を結成し、1954年にファンタジー・レコードからレコードをリリースしました。

その後、ソロ歌手として活動を本格化させ、アルバム『シングス・バラード・アンド・ブルース』（1956年）、『At the Gate of Horn』（1957年）を発表。1963年には『Odetta Sings Folk Songs』が年間で最も売れたフォーク・アルバムとなりました。1959年には、テレビ番組『Tonight With Belafonte』に出演し、「ウオーター・ボーイ」を歌い、ハリー・ベラフォンテと「バケツに穴が」をデュエットで披露しました。

公民権運動との関わり

1961年、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアはオデッタを「アメリカン・フォークミュージックの女王」と呼びました。同年、ハリー・ベラフォンテとの「バケツに穴が」が全英シングルチャートで32位を記録。1963年のワシントン大行進では「O Freedom」を歌い、人種差別撤廃を訴えました。オデッタ自身も、人種差別撤廃の市民運動に深く関与し、「非常に大きな私的活動の1つ」と語っています。

多様な音楽性と晩年

オデッタは音楽の幅を広げ、ソロからバンドへと転換し、ジャズの要素を取り入れた『Odetta and the Blues』（1962年）、『Odetta』（1967年）を発表しました。1968年には、ウディ・ガスリー・メモリアル・コンサートで印象的な演奏を披露しました。

音楽活動と並行して、映画にも出演。『Cinerama Holiday』（1955年）、『サンクチュアリ』（1961年）、『ミス・ジェーン・ピットマン物語』（1974年）などに出演しました。

1977年から1997年までの20年間はアルバムのリリースが少なかったものの、1998年以降は精力的に活動を再開。エラ・フィッツジェラルドに捧げた『To Ella』（1998年）や、グラミー賞にノミネートされた『Blues Everywhere I Go』（1999年）、『Gonna Let It Shine』（2005年）などを発表しました。

1999年には、ビル・クリントン大統領から文化功労賞である“National Medal of Art”を授与され、2005年にはアメリカ議会図書館から“Living Legend Award”（生きた伝説賞）を授与されました。

2008年夏には、77歳で北米ツアーを開始し、車椅子で歌声を届けました。最後の大きなコンサートは同年10月4日のサンフランシスコでのフェスティバル出演で、10月25日のトロントでの演奏が最後のステージとなりました。

2008年11月に体調を崩し、ニューヨークの病院で治療を受けましたが、2009年1月20日のバラク・オバマ大統領の就任式での演奏を願うも、2008年12月2日にニューヨークで逝去しました。2009年2月には、ニューヨークで追悼式が行われ、多くの人々がその死を悼みました。

ディスコグラフィー（一部）

『シングス・バラード・アンド・ブルース』(1956年)
『At the Gate of Horn』(1957年)
『Odetta Sings Folk Songs』(1963年)
『Odetta Sings Dylan』(1965年)
* 『Odetta at Carnegie Hall』(1960年)

オデッタ・ホームズは、その歌声と行動を通して、社会に希望と勇気を与え続けた偉大なアーティストでした。彼女の音楽とメッセージは、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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