オニクス・グランプリ

オニクス・グランプリ (Onyx Grand Prix)

オニクス・グランプリは、1989年から1990年の短期間においてフォーミュラ1に参戦していた英レーシングチームです。このチームの創設者はマイク・アールで、設立時の拠点はイングランド南東部のウェスト・サセックス州リトルハンプトンに置かれていました。チームの起源は、デビッド・パーレイがオーナー兼ドライバーを務めていたLECにさかのぼります。

チームの歴史の背景

LECは1973年からフォーミュラ・アトランティックやF5000、F2などのカテゴリで活動を開始し、1977年にはコンストラクターとしてF1に参戦。しかし、パーレイの交通事故により、LECは活動を停止しました。LECの主要メンバーであったマイク・アールとグレッグ・フィールドは1978年末に「オニクス・レース・エンジニアリング」を設立。その後、1980年からはマーチのカスタマーチームとしても機能し、ジョニー・チェコットやリカルド・パレッティなどがドライバーを務めました。

1982年には再びF1にプライベート参戦しましたが、結果は芳しくなく、1983年にはマーチのロビン・ハードからヨーロッパF2選手権の運営を任されました。1987年にはステファノ・モデナがF3000シリーズチャンピオンに輝くなど、チームは実力をつけていきました。

F1へのステップアップ

1988年、F1レギュレーションの変更に伴い、エンジンが自然吸気のみに移行することを好機と捉え、チームはF1への参戦を決定。翌年のために元マクラーレンのデザイナー、アラン・ジェンキンスを雇い、マシンの設計を進行しました。主スポンサーであったマールボロからも支援が決まり、ドライバー選定が進められました。しかし、新規参戦チームに課される予備予選への参加を嫌がるドライバーが多く、交渉が難航しました。

1989年シーズン

オニクスのF1デビュー年となる1989年、アラン・ジェンキンスが設計したORE1を完成させ、エンジンにはコスワース・DFRを搭載しました。ドライバーには元マクラーレンのステファン・ヨハンソンとF3000のベルトラン・ガショーが起用されました。ガショーのシート確保には、彼が持ち込んだスポンサー「マネートロン」が大きく関与しました。この年のF1は参戦台数が39台に増え、オニクスは予備予選に挑む必要がありましたが、好成績を残しました。

特に第4戦メキシコGP以降、ヨハンソンは次第に良いパフォーマンスを展開し、最終的には第13戦ポルトガルGPで3位に入賞。新興チームとして唯一表彰台を獲得し、コンストラクターズ選手権では10位にランクインしました。しかし、ガショーはチームに対する公の批判から解雇されてしまいました。

1990年シーズン

1990年、オニクスは前年の成績のおかげで予備予選から免除され、改良型ORE1Bでシーズンを迎えました。しかし、資金面でのトラブルが続き、チームは著しい苦境に立たされました。ポルシェとのエンジン供給契約が破談になったことが大きな痛手となり、その結果、スポンサーであるマネートロンのバン・ロッセムがチームの所有権を放棄しました。

新たなオーナーが現れましたが、チームの混乱は続き、元々の充実した体制が崩壊。新体制ではドライバーも次々にチームを去り、第10戦ハンガリーGPで予選落ちが続いたことで、ついにチームは撤退を決定しました。オニクス・グランプリは、その短い歴史を閉じることになったのです。

その後の影響

オニクスの歴史は短いものでしたが、F1界における彼らの挑戦はしまいには多くのトラブルの象徴となりました。また、チームの撤退後、バン・ロッセムは政界へ進出するも、その経歴は物議を醸すものでした。例えば、2018年に彼が亡くなった際には、様々な報道がなされました。オニクス・グランプリは、その複雑な経緯と共に記憶され続けるでしょう。

ドライバーたち

オニクスで競技した主なドライバーには、ステファン・ヨハンソン、ベルトラン・ガショー、J.J.レートなどがいます。特にヨハンソンは、その年目立つ成果を残しましたが、チームの運命は暗転していきました。F3000時代に活躍したエマニュエル・ピロやジョニー・ダンフリーズもこのチームに関わりを持っていました。最後に、スイスに保存されているオニクスのORE1は、彼らの歴史を物語る貴重な資料となっています。

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