オノン川

オノン川：チンギス・カン生誕の地を潤す大河

オノン川（モンゴル語: Онон гол）は、モンゴル国ヘンティー山脈のブルカン山を源流とする、黒竜江（アムール川）の重要な支流です。流域面積は96,200平方キロメートルに及び、その豊かな水は広大な地域を潤しています。歴史的には、斡難、鄂嫩、敖嫩など様々な漢字で表記されてきました。古くは「オナン川」と呼ばれ、『元朝秘史』や『集史』といった歴史書にもその名を見ることができます。

地理

オノン川は、ヘルレン川と並びヘンティー山脈を代表する河川ですが、ヘルレン川が山脈の南麓を流れるのに対し、オノン川は山脈の北側を流れるという特徴があります。北東方向に流れ、ロシアとの国境を越え、シベリアのザバイカリエ地方へと進み、1,032キロメートルを流れた後、シルカ川と合流します。

歴史的意義：チンギス・カン生誕の地

オノン川流域は、モンゴル帝国の創始者であるチンギス・カンにとって非常に重要な場所です。彼は、この流域内のデリウン＝ボルダク（現在のモンゴル国北東部）で誕生したと伝えられています。1206年（太祖1年）には、この川の源流でクリルタイ（部族長会議）が開かれ、チンギス・カンの第二次即位、すなわちモンゴル帝国建国が宣言されました。

チンギス・カンゆかりの地であるオノン川流域でしたが、モンゴル帝国の統治の中心としては東に寄り過ぎていました。そのため、オゴデイの時代には、帝国の拠点はケレイト族の本拠地であったカラトンに移され、カラコルムが建設され、そこが新たな首都となりました。しかし、オノン川源流地域は、祖先の地として特別な意味を持ち続け、歴代モンゴル皇帝のクリルタイ開催地として常に重要な候補地でした。

生物圏保護区

2023年には、モンゴル国内のオノン川とバルジ川の流域が、ユネスコの生物圏保護区に指定されました。この指定は、この地域の豊かな自然環境と生物多様性を保護し、持続可能な開発を促進することを目的としています。

オノン川は、単なる地理的な存在であるだけでなく、モンゴルの歴史と文化に深く根ざした川です。チンギス・カンの生誕と帝国建国という重要な出来事の舞台となり、現在もその流域は貴重な自然環境として保護されています。オノン川は、過去と現在を結びつけ、未来へと語り継がれるべき、モンゴルの象徴的な存在と言えるでしょう。

関連項目

アムール川
アルグン川
インゴダ川
シルカ川
ヘルレン川

外部リンク

Onon Balj River - stdcc

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