オバデヤ書

『オバデヤ書』について

『オバデヤ書』は、旧約聖書に収められた預言書の一つで、わずか1章21節からなる、旧約聖書の中で最も短い書です。伝統的に、筆者はオバデヤという名の人物であるとされています。この名前は「主（ヤハウェ）の僕」という意味を持っています。

構成

『オバデヤ書』は、大きく二つの部分に分けることができます。

1. エドムの傲慢と滅亡: 冒頭から9節まででは、ヤハウェの意志によるエドムの完全な滅亡が預言されています。オバデヤは、エドムが受ける徹底的な破壊を、「盗人が来て夜に襲撃されるように、お前は痛めつけられる」（5節）と描写しています。また、ヤハウェはエドムの同盟者たちを離反させ、エドムを国境から追い出すと述べています（7節）。
2. イスラエルの回復: 10節から14節では、エドムが滅びる理由が示されています。エドムは、イスラエルが攻撃された際に、略奪を行い、敵対的な行動をとったとされています。エドムとイスラエルは兄弟関係にあるにもかかわらず、そのように振る舞ったため、永遠の恥と滅びを宣告されています。15節から21節では、エドムの滅亡とイスラエルの回復が語られます。エドムの滅亡は徹底的で、「エサウの家（＝エドム人）には、生き残る者がいなくなる」（18節）とまで言われています。その一方で、イスラエルは聖所を取り戻し、かつてエドム人が住んでいた土地に戻ると預言されています。最終的には、ヤハウェがエドムの山地を統治すると述べられています（21節）。

歴史的背景

この書の成立年代については、学者間で議論があります。著者やその背景が不明なため、預言の内容から推測するしかありません。エドムがイスラエルを見捨てたことによる滅亡の預言は、紀元前605年から586年のエルサレム攻撃とバビロン捕囚の時代に合致すると考えられています。オバデヤ1-9節はエレミヤ書49:7-22と並行関係にあるとされ、エレミヤ書の該当箇所が紀元前604年頃に書かれたことから、『オバデヤ書』も同時期か、それ以前に書かれた可能性があります。

主題

『オバデヤ書』の主題は、神の民の敵の滅亡です。他の預言書とは異なり、「悔い改めよ」というメッセージではなく、過去の行いに対する避けられない滅びが語られています。また、神の民内部の裁きという側面もあり、ヤコブ（イスラエル）とエサウ（エドム）という兄弟の扱いを通して、兄弟を不当に扱う者にはヤハウェの怒りが臨むと教え、ヤハウェに従うことを促しています。

その他の議論

『アモス書』との関係

『オバデヤ書』18節と『アモス書』9章12節の間には議論があります。『オバデヤ書』ではエドム人に生き残る者がいないとされる一方で、『アモス書』ではエドムの残りの者がイスラエルに与えられるとされています。この矛盾について、学者たちは『アモス書』の言及は象徴的なもので、イスラエルの敵全体を指していると解釈することがあります。

地名の同定

20節に登場する「セファラド」という地名は、伝統的にスペインであるとされてきました。しかし、元々は中東の地名が後にヨーロッパに転用された可能性も指摘されています。この地名の同定は、依然として結論が出ていません。

並行記述

新約聖書には直接の並行箇所はありませんが、旧約聖書ではエレミヤ書49:7-16とオバデヤ書1-8に類似した記述が見られます。また、『オバデヤ書』の言葉遣いや様式は、特に終末部分において『ヨエル書』に類似しています。

関連項目

オバデヤ
エドム
エサウ

外部リンク

Masoretic text from Mechon Mamre
ユダヤ教による英語翻訳
キリスト教による翻訳（英）
* 註解

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