オプース

オプース（Opous）

古代ギリシアにおけるロクリス地方の中心的な都市の一つ、オプースは、現在のギリシャ共和国中央部、フティオティダ県に属するロクロイ市内のアタランティの地に位置していました。この都市は古くからその存在が知られており、紀元前8世紀頃に成立したとされるホメロスの叙事詩『イーリアス』の中にも、その別名であるオポエイスとしてたびたび言及されています。叙事詩における言及は、オプースが神話時代から重要な共同体であったことを示唆しています。

歴史

戦略的に重要な位置にあったオプースは、古代ギリシア世界の大きな歴史的出来事に深く関わりました。紀元前5世紀初頭、アケメネス朝ペルシアがギリシア本土への侵攻を開始した際、オプースは他のギリシア都市国家と同様にペルシアの脅威に直面しました。特に紀元前480年に発生したテルモピュライの戦いでは、スパルタ王レオニダス率いるギリシア連合軍の一員として、オプースから派兵された兵士たちが防衛線に加わりました。しかし、この戦いは最終的にギリシア側の敗北に終わり、ロクリス地方もペルシア軍の支配下に入り、オプースはペルシアに降伏しました。

その後、紀元前431年に勃発したアテネを中心とするデロス同盟と、スパルタを中心とするペロポネソス同盟との間の長期にわたる大戦、ペロポネソス戦争において、オプースはスパルタ側（ペロポネソス同盟側）として参戦しました。ロクリス地方はアテネとスパルタの勢力圏の境界近くに位置しており、どちらの陣営に与するかは都市国家にとって重大な選択でしたが、オプースはスパルタとの連携を選んだようです。

出身著名人

オプースからは、神話や古代の思想史に名を残す人物が輩出されたと伝えられています。

オイレウス: アルゴナウタイの一員であり、トロイア戦争で活躍した小アイアースの父とされる神話上の英雄です。
小アイアース: トロイア戦争におけるギリシア側の主要な英雄の一人。俊足で知られ、テラモンの子である大アイアースと区別されます。
* オプースのピリッポス: 紀元前4世紀の哲学者。プラトンの著名な直弟子の一人であり、アカデメイアにおいてプラトンの思想を継承・発展させました。プラトンの最後の著作とされる『法律』の続編にあたる『エピノミス』の著者であるという説が有力視されており、古代哲学史において重要な人物と見なされています。

これらの人物の存在は、オプースが単なる軍事・経済拠点としてだけでなく、神話や哲学といった文化的な側面においても、古代ギリシア世界と深いつながりを持っていたことを示しています。

まとめ

古代ロクリス地方の主要都市であったオプースは、ホメロスの叙事詩に登場するほどの古い歴史を持ち、ペルシア戦争やペロポネソス戦争といった大きな戦乱にも関与しました。また、神話時代の英雄やプラトンの弟子といった著名な人物を輩出した地でもあります。現代のフティオティダ県アタランティ周辺の地に眠る遺跡は、この古代都市の豊かな歴史を今に伝えています。オプースは、ロクリス地方の歴史、さらには古代ギリシア史全体を理解する上で、欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

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