オペル・カリブラ

カリブラ（Calibra）

カリブラは、ドイツの自動車メーカーオペルが1989年から1997年にかけて製造・販売したスペシャリティカーで、イギリスではボクスホール・カリブラとして1999年まで販売されていました。カリブラは、マンタに代わる新たなスペシャルティクーペとして位置づけられ、1989年6月10日に初めて登場しました。このモデルは、オペルのベース車両であるベクトラAを基にして開発され、優れた空力性能を持つことで知られています。

カリブラのボディはCd値0.26を誇り、ターボモデルでは0.29の値を持っていました。これは当時、量産車で最も高い空力性能となっており、その後1999年にホンダ・インサイトやアウディ・A2がこの数値を上回るまで、他に匹敵するモデルは存在しませんでした。また、居住性にも優れており、シートバックは6対4分割可倒式で、ラゲッジスペースの容量を最大980Lに拡大することが可能です。

エンジンは、2.0Lの直列4気筒SOHC/DOHCを搭載し、1994年には170psを発生するエコテック2.5LV型の6気筒DOHCエンジンも追加されました。駆動方式は前輪駆動（FF）で、サスペンションはフロントにストラット、リアにセミトレーリングアーム式を採用しており、オメガモデルに搭載されているDSAサスペンションシステムが使われています。ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク、リアもディスクで、性能面にも配慮されています。

1990年11月には、ビスカスカップリング式フルタイム4WDのモデルも導入され、運転の安定性が向上しました。1991年には、ターボエンジンのモデルも追加され、2.0LのDOHCエンジンにKKK社製のターボを搭載することで204psを発揮しました。このターボモデルは、6速MTと組み合わせられ、駆動方式も4WDでした。さらに、熱効率を高めるためにエキゾーストパイプとタービンハウジングが一体化され、軽量化も図られています。

日本国内では1994年にカリブラが販売され、初期モデルは16V（DOHC・FF・4速AT）及びターボの2種類が導入されました。ただし、ターボは1994年と1995年の2年間限定での輸入でした。日本版カリブラにはエアバッグ（1994年モデルでは運転席のみ）、ABS、イモビライザーが標準装備されており、オプションとしてレザーシートやサンルーフも選べました。1995年モデルからはホワイトメーターが採用され、センターコンソールには電圧計と油圧計が組み込まれるようになりました。

カリブラの生産は1997年6月に終了し、その後は特にモータースポーツ分野での活躍が際立ちました。旧ドイツツーリングカー選手権（DTM）にはカリブラをベースにしたマシンが1994年から参戦。競技用チームはヨーストで運営され、エンジン開発にはコスワースが関与しました。1995年までのマシンは、自然吸気の2.5LV6エンジンを搭載していましたが、1996年にはバンク角75度のいすゞ製エンジンに変更され、出力も向上しました。ドライバーには元F1ドライバーのケケ・ロズベルグやJ.J.レートが名を連ねました。

1995年にはシリーズ3位を獲得し、1996年にはマヌエル・ロイターがシーズンタイトルを勝ち獲りましたが、当年をもって旧DTM/ITCは廃止され、カリブラが最後にチャンピオンを獲得したモデルとなりました。このように、カリブラはその性能とデザインで多大な人気を誇り、今でも自動車愛好家に愛され続けています。

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