ホンダ・インサイト

インサイト（INSIGHT）

インサイトは、ホンダがかつて生産・販売していたハイブリッドカーで、これまでに3世代が登場しました。それぞれの世代には共通する特徴があり、いずれも前輪駆動のハイブリッド専用車で、ファストバックスタイルを持つことが挙げられますが、車格やドア数、コンセプトには大きな違いがあります。

初代インサイト（1999年 - 2006年）

初代ZE1型のインサイトは、1997年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「J-VX」を基にして開発されました。コンパクトなファストバッククーペスタイルが特徴的で、ホンダのCR-Xを彷彿とさせるデザインが際立っています。特に外装では、リアホイールスカートを採用し、優れた空気抵抗を実現し、Cd値は0.25という世界水準の低燃費を目指しました。

ホンダはその車体にアルミ合金を使用し、さらにフロントフェンダーなどは樹脂製としました。パワーユニットには直列3気筒1.0LのECA型エンジンと、アシスト用の直流ブラシレスモーターが組み合わされ、Honda IMAシステムを採用しました。このハイブリッドシステムは、走行中常にエンジンが作動するため、広義にはパラレル型に分類されます。

この初代モデルが登場した当時、燃費は35km/Lと、世界の量産ガソリン車としては最高水準でした。2年連続でアメリカ合衆国環境保護庁の燃費ランキングでも1位を獲得するなど、性能の高さが評価されました。2006年までの生産で、合計17,020台が製造され、そのうち日本仕様は1,600台に留まりました。

2代目インサイト（2009年 - 2014年）

2代目ZE2/3型は、2009年に市場に登場しました。スタイルは競合のトヨタ・プリウスに対抗するために5ドアハッチバックに変更され、初代よりも軽量化が図られました。このモデルではコストダウンが進められ、アルミフレームボディの採用が見送られましたが、ホンダ車の多くの部品が共通化され、効率性が重視されました。

2代目も初代同様にIMAシステムを採用しましたが、燃費モニターやエコドライブアシスト機能が標準装備され、リアルタイムで燃費運転を意識させる工夫がなされています。このモデルでは、1.3Lエンジンに加え、新設計の可変シリンダーシステムが導入され、より高い燃費性能を実現。それに伴い、2009年には累計販売10万台を達成しました。

3代目インサイト（2018年 - 2022年）

3代目ZE4型では、デザインを一新し、ファストバックスタイルを維持しつつも、セダンスタイルに変わりました。ホンダの10代目シビックとプラットフォームを共通化しつつ、ハイブリッド専用に設計されました。このモデルでは、2008年以来の新しい2モーター式ハイブリッドシステムが搭載され、さらなる燃費性能の向上が図られています。

最高出力のエンジンとモーターの組み合わせにより、JC08モードで34.2km/L、WLTCモードで28.4km/Lの優れた燃費性能を実現。
販売は2018年から日本市場でも開始されましたが、2022年に販売が終了し、次代のシビックe:HEVへとバトンタッチされることとなりました。

車名の由来

「インサイト」とは、洞察力や眼識という意味を持ちます。これはハイブリッドカーの普及を見据えた車両にふさわしい名前とされています。

インサイトは、ホンダが手掛けたハイブリッドカーの先駆けであり、車両の選択肢が広がる中でも、その存在感はしっかりと根付いています。

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