オヤケアカハチの乱

オヤケアカハチの乱（遠弥計赤蜂の乱）

オヤケアカハチの乱は、1500年に八重山の首領であったオヤケアカハチと、琉球王国（中山）との間で行われた戦いです。この戦は琉球が勝利し、アカハチは討たれました。別名、オヤケアカハチ戦争とも呼ばれています。

原因

琉球の正史である「赤蜂征伐」には、攻撃の理由が2点記録されています。それは、八重山が長年続けていた朝貢を2～3年断ったこと、そして臣民である宮古を攻めようとしたことです。

当時の宮古は仲宗根豊見親の一族が統治していました。「忠導氏家譜正統」によると、空広が住民の好戦的な性格を憂い、その原因を米の豊作による怠慢と考え、琉球への朝貢を提案したとされています。さらに八重山にも同様の朝貢を求めたところ、アカハチがこれに同意せず宮古島を襲おうとしたため、琉球に訴えたとされています。

しかし、この琉球側の記録には不自然な点も多く、後世の忖度による書き換えである可能性も指摘されています。稲村賢敷は、空広が八重山にも定租を課そうとしたことが、アカハチを挑発した原因であると説明しています。

一方、八重山の史料では、アカハチは「アカハチホンカワラ」という2人組であったと記述されています。少なくとも宮古において「カワラ」は珍しい名前ではなく、首領格の称号であった可能性もあります。また、アカハチに島民全体が同心していたという記述も共通しています。

開戦前

アカハチは、琉球軍が侵攻してくるという情報を得て、島民に向けて迎撃の檄を飛ばしました。ほとんどの島民はアカハチに同心しましたが、一部の者は従いませんでした。石垣村の長田大主は逃亡し、仲間満慶山や波照間のシシカトノらは殺害されました。

アカハチは、琉球との間に境界線があるという認識を示し、琉球の侵攻から島を守ろうとしました。しかし琉球側は、アカハチの行為を「謀叛」とみなし、攻撃の正当性を主張しました。

戦闘

琉球軍は空広の先導で八重山へ向かいました。琉球軍は9人の将を立て、軍船100艘、3000人で那覇を出発し、13日後に八重山石垣に到着しました。逃亡していた長田大主は琉球軍を歓迎し、道案内を務めました。

琉球軍は登野城と新川に同時に攻撃を仕掛けましたが、悪日を忌んで戦わずに退却しました。翌日、再び攻撃を仕掛け、最終的に琉球軍が勝利しました。

戦後処理

琉球は初めて空広を宮古頭、マチリンガニを八重山頭に任命しました。空広は琉球に朝見した際に宝剣と宝珠を献上し、琉球からは簪と白絹衣が下賜されました。また、漲水御嶽に戦勝祈願をしていたため、帰島後に御嶽の周囲に石垣を築きました。

長田大主は古見大首里大屋子に抜擢され、後に石垣八重山頭職となりました。那礼当の子は美良底首里大屋子、仲間満慶山の子は首里大屋子、シシカトノの子は与人や女頭職に任命されました。

長田大主の妹である真市は、神託によって琉球軍の帰路の安全を祈願し、褒賞として俸米を授けられました。当時の中山兵は神託をあまり信じていませんでしたが、真市の祈りによって船が無事に帰還したとされています。

君南風について

久米島のノロである君南風も従軍し、その功績によって代々世襲が認められました。君南風は八重山で奇策を用いて琉球軍の上陸を助け、宇本嶽君真物神を帰服させたとされています。しかし、「蔡鐸本中山世譜」には君南風に関する記述はありません。

逸話

アカハチは討たれましたが、琉球の侵攻から民俗を守ろうとした英雄として、現在も地元で語り継がれています。小浜島には、アカハチが逃げ込んだという伝説のある「オヤケアカハチの森」があります。

一方、戦功を挙げた君南風は、久米島ノロの最高位の地位を与えられ、「おもろさうし」にも謡われる英雄となりました。また、石垣の神女マイツバは、安全な航海のための神託を与えたことで、琉球から褒賞を受けましたが、大阿母職を固辞し、イラビンガミ神職を拝命しました。また、竹富島の西塘は、首里で学問を修めて土木建築家となり、園比屋武御嶽の石門を建築しました。

このように、オヤケアカハチの乱は、単なる戦いにとどまらず、その後の八重山、宮古、久米島の歴史に大きな影響を与えた出来事でした。

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