オラウス・マグヌス

オラウス・マグヌス（Olaus Magnus, 1490年 - 1558年8月1日）は、スウェーデンが生んだルネサンス期を代表する知識人の一人です。宗教家、歴史学者、そして地理学者として多岐にわたる分野で貢献し、特に北欧に関する知識をヨーロッパに広めた功績は大きいと言えるでしょう。

生涯

1490年、リンシェーピングのスケーニンゲで、名門貴族の家系に生まれました。1510年から1517年までドイツで学問を修めた後、兄ヨハンと同様に聖職者の道を歩み始めます。ストレングネース大聖堂のプロボストに任命され、その後、国王グスタフ1世によってローマ教皇国への使節として派遣されました。

しかし、スウェーデンに宗教改革の波が押し寄せると、兄ヨハンは改革に抵抗。1537年にローマへ亡命します。1544年にヨハンの死後、オラウスがウプサラ大司教に任命されますが、その地位は既に形骸化していました。そのため、オラウスはスウェーデンに戻ることなく、ローマの聖ビルギッタ修道院で生涯の大半を過ごしました。1545年から1549年までは、教皇パウルス3世の命を受け、トレント公会議にも参加しています。

1558年8月1日、ローマで没し、サンピエトロ大聖堂の兄の墓の隣に埋葬されました。

カルタ・マリナ（Carta Marina）

オラウス・マグヌスの最大の功績の一つが、1539年にヴェネツィアで発行された北欧地図「カルタ・マリナ（Carta marina et descriptio septentrionalium terrarum ac mirabilium rerum）」です。この地図は、グリーンランド南部からバルト海沿岸、アイスランド、北海の島々、そしてスカンジナビア半島全体を網羅し、当時としては極めて正確で詳細なものでした。

それまでのプトレマイオス式地図を凌駕するこの地図は、北欧を客観的かつ明確に表現した初めての地図として、ヨーロッパの地理学に大きな影響を与えました。長らく紛失されたと考えられていましたが、19世紀に一部がバイエルン州立図書館で発見され、その価値が再認識されました。

北方民族文化誌（Historia de gentibus septentrionalibus）

オラウスは地理学者としてだけでなく、北方民族の文化誌を著したことでも知られています。全22巻からなる『北方民族文化誌』は、北欧の国々の商業、政治、地形、鉱物、生物などを豊富な図版とともに紹介した大著です。この書物は、当時のヨーロッパの人々にとって、未知の世界であった北欧の姿を具体的に知るための貴重な情報源となりました。

その他にも、スウェーデンの聖女ブリジッテの娘であるカタリナの生涯を描いた Vita Catharinae や、兄ヨハンと共同で Historia Gothorum librls XXIV（1554年）、Historia Metropolitana, seu Episcoporum et Archiepiscoporum Upsaliensium（1557年）などを著しています。

オラウス・マグヌスは、ルネサンス期における北方研究の先駆者として、その後のヨーロッパにおける北欧理解に多大な貢献を果たした人物と言えるでしょう。

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