オリョール

オリョール：歴史と文化の織りなすロシアの都市

オリョールは、ロシア連邦オリョール州の州都であり、モスクワから南南西へ約360kmの位置に、オカ川上流に広がる都市です。2021年の時点で人口は約30万3千人を数え、歴史的な建造物や豊かな文化遺産、そして戦略的な地理的条件によって特徴づけられる都市です。

古代からの集落から要塞都市へ

考古学調査によると、オリョール周辺には12世紀から要塞都市が存在していたことが示唆されています。当時、この地はチェルニゴフ公国の一部であったと考えられていますが、文献に記録が残されておらず、その名称は明らかになっていません。13世紀にはカラチェフ公国の一部となり、15世紀初頭にはリトアニア大公国に支配されましたが、その後略奪を受けて廃墟と化しました。

16世紀、モスクワ大公国の一部となったこの地に、イヴァン4世（雷帝）は1566年、南の国境を守るための新たな要塞建設を命じます。旧要塞の跡地に建設されたオリョールの要塞は、わずか1年足らずで完成しました。しかし、低地への建設という戦略的な欠陥を抱えており、周囲の高地からの攻撃に対しては脆弱なものでした。

激動の時代と復興

17世紀に入ると、偽ドミトリー1世、イワン・ボロトニコフの農民反乱軍、偽ドミトリー2世の軍勢などがオリョールを通過、または一時的に駐留しました。ロシア・ポーランド戦争においては、ポーランド軍による略奪を二度経験し、一時的に廃墟と化しました。1636年に再建されますが、防衛上の問題点から高台への移転計画も持ち上がりましたが、最終的には実現しませんでした。18世紀初頭にはクレムリ（城塞）も解体されました。

18世紀半ば以降はロシア帝国の穀倉地帯の中心都市として発展し、オカ川の水運、そして1860年代以降は鉄道によって穀物の輸送を担いました。行政区分においても変遷を重ね、1708年にはキエフ総督府の一部となり、1719年にはオリョール地区が設置されました。1727年にはベルゴロド県に移管され、1778年にはオリョール総督府が設置されるなど、行政の中心地として重要な役割を果たしました。1779年には都市計画に基づいた再建が行われました。

20世紀の激動と現在

十月革命後、オリョールはボルシェビキの支配下に置かれますが、1919年には短期間、白軍アントーン・デニーキン率いる軍隊に占領されました。1937年にはオリョール州の州都となりました。第二次世界大戦中にはドイツ軍に占領され、激しい戦闘の末に解放されましたが、街並みは完全に破壊されました。

スターリン政権下では大粛清が行われ、多くの人々が犠牲となりました。オリョール郊外には、銃殺刑に処された政治家や活動家たちの墓地が存在しています。

現在、オリョールは歴史的建造物や文化施設が点在する都市として、観光客にも人気があります。小説家イワン・ツルゲーネフの生誕地としても知られており、彼の作品にゆかりのある場所を訪れることができます。姉妹都市も多く、国際交流も盛んです。交通の便も良く、M2高速道路が通っていることから、アクセスも容易です。ロシアの歴史と文化を深く理解する上で、オリョールは重要な都市と言えるでしょう。

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