オリン・エッゲン

オリン・ジューク・エッゲン（Olin Jeuck Eggen、1919年7月9日 - 1998年10月2日）は、アメリカ合衆国出身の著名な天文学者です。彼の研究は、恒星の運動データを基にした銀河系の形成モデル提唱に大きな影響を与えました。一部文献ではミドルネームが「Jenck」と誤記されることがありますが、正しくは「Jeuck」です。

エッゲンはウィスコンシン州オーフォードヴィルで、ノルウェー系移民の両親のもとに生まれました。1940年にウィスコンシン大学を卒業後、第二次世界大戦中は戦略諜報局（OSS、CIAの前身）に勤務しました。戦後、大学に戻り、1948年に天体物理学の博士号を取得しています。

略歴

1945年：カリフォルニア大学に職を得ます。
1956年：グリニッジ王立天文台の主任助手となります。
1960年：カリフォルニア工科大学の教授に就任します。
1963年：再びグリニッジ王立天文台に戻ります。
1965年：パロマー山天文台へ移籍します。
1966年：オーストラリアへ渡り、ストロムロ山天文台とサイディング・スプリング天文台の台長、およびオーストラリア国立大学高等研究所教授に就任します。
1977年：チリのセロ・トロロ天文台に移り、1998年まで勤務しました。

業績

エッゲンは1950年代から1960年代にかけて、観測天文学において重要な役割を果たした人物として知られています。彼の最大の功績の一つは、1962年にドナルド・リンデンベルとアラン・サンデージと共に発表した、いわゆる「ELS論文」です。この論文では、銀河系が巨大なガス雲の収縮によって形成されたという画期的な仮説を提唱しました。この考え方は、現代の銀河形成理論の基礎となっています。

またエッゲンは、現在広く受け入れられている「運動星団」という概念を初めて提唱したことでも知られています。これは、空間内を同じ方向に移動する星々の集団を指すもので、星の形成や進化を理解する上で重要な概念です。

ストロムロ山天文台の台長時代には、とも座ρ星の変光を発見し、1982年にはヒアデス星団の距離を精密に測定し、142光年という値を得ました。これらの業績は、彼の観測技術の高さと、データ分析能力の優れた証です。

海王星ファイル

エッゲンの死後、かつてグリニッジ天文台に保管されていた、歴史的に重要なファイルや文書が彼の所持品の中から発見されました。これには、アダムズが海王星を発見した際の一次情報が記された「海王星ファイル」が含まれていました。生前、エッゲンはこれらの文書の所持を否定していました。この発見は、天文学史における貴重な情報を明らかにする一方で、倫理的な議論を呼び起こしました。

エッゲンの生涯は、観測天文学の発展に貢献しただけでなく、科学史における重要な出来事に関わった人物として、今後も語り継がれるでしょう。

外部リンク

A Remembrance of Olin Eggen - 1919-1998
EGGEN TAKES THE PAPERS
The Case of the Pilfered Planet
* 死亡記事: BAAS 32 (2000), 1661

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