オルトトリジン

オルトトリジン：塩素検出試薬としての歴史と現状

オルトトリジン(o-tolidine)は、3,3'-ジメチルベンジジンという化学式を持つ有機塩基の一種です。かつては、水道水などにおける塩素の検出に広く用いられていた重要な分析試薬でした。

オルトトリジンは、白色から赤みを帯びた粉末状の物質で、水には溶けにくい性質を持っています。その合成法は、o-ニトロトルエンを還元的に二量化して得られる中間体から、酸を作用させることでベンジジン転位を起こさせることで実現します。

オルトトリジン法：塩素検出の原理と限界

オルトトリジンは、塩素だけでなく、次亜塩素酸やクロラミンといった酸化力の強い塩素化合物とも反応します。この反応によって、溶液の色が淡黄色から黄褐色へと変化し、その色の濃淡から塩素の濃度を推定することができました。この原理を利用したオルトトリジン法は、かつて水道水の塩素濃度測定に広く用いられていました。

しかし、オルトトリジン法はいくつかの欠点がありました。まず、発がん性が指摘されたことが大きな問題です。そのため、現在では公的な水道水検査においては使用が中止され、より安全なジエチルパラフェニレンジアミン法が主流となっています。

さらに、オルトトリジン法は精度に問題がありました。重金属などの夾雑物によって測定結果に誤差が生じやすく、正確な測定には高度な技術と注意が必要でした。また、亜硝酸イオン、臭素、ヨウ素、オゾン、二酸化窒素、二酸化[[塩素]]など、他の物質とも反応するため、それらの影響を排除する工夫も必要でした。

現在におけるオルトトリジン

オルトトリジンは発がん性物質であるため、公的な検査には使用されなくなりましたが、その簡便さから、現在でも塩素濃度を簡易的に測定する必要がある場面で、一部使用されているケースがあります。例えば、プールなどの塩素濃度を測定する際に、希釈されたオルトトリジン溶液を用いる場合があります。

しかし、オルトトリジンを取り扱う際には、その発がん性への十分な注意が必要です。使用後は適切な廃棄処理を行うとともに、皮膚への接触や吸入を避けるための安全対策を徹底する必要があります。市販されているオルトトリジン溶液は、濃度が希釈されているため危険性は低減されていますが、取り扱いには注意が必要です。

まとめ

オルトトリジンは、かつて重要な塩素検出試薬として活躍していましたが、発がん性と精度の問題から、公的な検査からは姿を消しました。現在では、安全性の高い代替法が用いられています。しかし、その簡便さから、一部の分野では依然として使用されており、取り扱いには細心の注意が必要です。

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