オロシウス

オロシウス

オロシウス（Orosius, 383年頃 - 417年以降）は、ローマ帝国後期のキリスト教の聖職者、歴史家、学者として知られています。彼の生涯は不確かな部分が多く、生地についても諸説ありますが、現在のポルトガルのブラガとする説が有力です。彼はローマ帝国上層のキリスト教徒家系に生まれたと考えられています。

生涯

414年までにヒスパニアにまで進出したゲルマン人勢力から逃れてアフリカに渡り、ヒッポで教父アウグスティヌスに師事しました。キリスト教徒として見聞を深めるため各地を訪れ、アウグスティヌスの代わりにエルサレムでペラギウスと神学論争を繰り広げました。帰国後、師であるアウグスティヌスの下で数多くの神学書や歴史書を著しました。

しかし、その後の生涯についてはほとんど分かっていません。死去した時期についても不明であり、研究者によってはおそらく5世紀初頭と推定されていますが、確たる証拠はありません。

著作

オロシウスの主著は『異教徒に反駁する歴史』(Historiae Adversus Paganos)です。この書は、キリスト教史観に基づいて書かれた最初期の歴史書であり、アウグスティヌスの『神の国』を補完する目的で著されたとされています。中世ヨーロッパにおいては必修の史書として広く読まれ、9世紀イングランドではアルフレッド大王の学芸振興策の一環として古英語訳が作成されました。

また、10世紀のアンダルスで作られたアラビア語訳（通称『オロシウスの書』）は、ハカム2世の図書館に収められたと考えられています。このアラビア語訳は、ヒエロニムスやイシドルスなど古代以来のラテン語キリスト教著作からの抜粋も加えられた独自の編集がされており、史学史上も貴重な資料となっています。

『異教徒に反駁する歴史』

この著作は、ローマ帝国の衰退をキリスト教の普及という観点から解釈しようとしたもので、古代世界の歴史をキリスト教的な視点から捉え直す試みとして評価されています。オロシウスは、ローマ帝国の苦難は異教の神々への信仰によるものだと主張し、キリスト教の受容こそが解決策であると説きました。彼の歴史観は、中世ヨーロッパの思想に大きな影響を与え、その後の歴史解釈に多大な影響を与えました。

参考文献

Martínez Cavero, Pedro (2002) (スペイン語). El pensamiento histórico y antropológico de Orosio. Antigüedad y cristianismo. 19. Murcia.
石黒太郎「オロシウス『異教徒に反駁する歴史』序文のラテン語について」『明治大学教養論集』第504号、2015年、1-17頁。

外部リンク

Historiarum Adversum Paganos Libri VII
Paulus Orosius: Histories against the Pagans - ラテン語原典と英訳
* Paulus Orosius - The Catholic Encyclopedia

オロシウスの著作は、古代から中世への移行期におけるキリスト教思想の変遷を理解する上で重要な資料であり、彼の生涯と思想は、今日においても研究され続けています。

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