オロチ (天体)

オロチ (Orochi)

オロチは、地球から見てくじら座の方向に約120億光年彼方にある銀河です。2012年時点で最も明るいモンスター銀河として知られています。仮符号としてAzTEC-ASTE-SXDF1100.001とも呼ばれます。

概要

オロチは、激しい星形成活動、いわゆるスターバースト現象が起きているスターバースト銀河です。特に、宇宙誕生から約50億年より前の初期宇宙に存在したスターバースト銀河はモンスター銀河と呼ばれており、オロチもその一つです。モンスター銀河は、年間500～1000太陽[[質量]]程度の星形成を行うと考えられていますが、オロチは当初、その10倍以上にあたる年間11,000太陽[[質量]]もの星形成が行われていると推定され、1000個以上存在するモンスター銀河の中でも最も明るい、超モンスター銀河と考えられていました。

明るさと星形成

オロチの明るさから推定される星形成速度は、年間11,000太陽[[質量]]と非常に活発なものでした。しかし、その後の研究から、オロチの手前にある銀河による重力レンズ効果によって、実際よりも明るく観測されている可能性が高いことが示唆されました。重力レンズ効果を考慮すると、オロチの実際の星形成速度は年間870太陽[[質量]]程度であり、超モンスター銀河ではなく、通常のモンスター銀河に分類されると考えられています。オロチのスターバースト活動は比較的短く、継続時間は約3000万年程度と推定されています。

重力レンズ効果

オロチが非常に明るく見える原因の一つとして、手前にある銀河の重力によって光が曲げられる重力レンズ効果が挙げられます。この効果により、オロチからの光が増幅され、実際よりも明るく観測されていると考えられています。この重力レンズを引き起こしている銀河は、赤方偏移z=約1.4、距離93億光年、質量は約1000億太陽[[質量]]と推定されています。

物理的性質

オロチの直径は約11,000光年、質量は約9270億太陽[[質量]]と推定されています。そのうち、大部分の約9100億太陽[[質量]]はガス、約170億太陽[[質量]]は塵で構成されています。また、ガスの温度は約20K(-253℃)と非常に低温であると考えられています。

距離

オロチは、約120億光年という非常に遠い距離に位置し、宇宙誕生から約18億年後の初期宇宙に存在していた天体です。オロチの距離を測定する際、通常用いられる一酸化炭素の輝線を捉えることができませんでした。そのため、1000μmから1500μmのミリ波を観測し、一酸化炭素の輝線に制約を加えることで距離を推定しました。このミリ波領域の観測は、複数の観測装置で行われたため、測定値には若干のばらつきがあります。

観測

オロチは、くじら座の方向にある深部探査領域SXDSで発見されました。発見には、国立天文台が所有するチリのASTE望遠鏡が用いられました。発見者は、東京大学大学院生の五十嵐創氏、河野孝太郎教授、国立天文台の伊王野大介助教（いずれも当時）が率いる、日本、アメリカ、イギリス、メキシコの国際共同研究チームです。その後、日本のすばる望遠鏡、アメリカのサブ[[ミリ波]]干渉計SMA、ミリ波干渉計CARMA、カリフォルニア工科大学大型サブ[[ミリ波]]望遠鏡CSO、超大型干渉[[電波望遠鏡群]]VLA、スピッツァー宇宙望遠鏡、イギリスの近赤外望遠鏡など、複数の観測装置を用いて詳細なデータが収集されました。

名称

オロチの名前は、日本神話に登場するヤマタノオロチにちなんで名付けられました。これは、この銀河の明るさが、モンスター銀河の頂点に君臨する「王」にふさわしいとされたためです。

脚注

関連項目
COSMOS J100054.13+023434.9
宇宙の年表
活動銀河

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