ASTE望遠鏡

ASTE望遠鏡（アステぼうえんきょう）

ASTE望遠鏡は、国立天文台が南米チリのアタカマ砂漠、標高4800mの高地に設置した電波望遠鏡です。正式名称は「アタカマサブミリ波望遠鏡実験(Atacama Submillimeter Telescope Experiment)」で、その名の通り、技術的な「実験」と研究補助としての「実験」という二つの意味合いを併せ持っています。このため、鏡面精度は20μmという高い精度を誇り、実験的なボロメータ受信機などが搭載されています。また、ASTEは「実験」プラットフォームとしての側面も持っています。

設置までの経緯

ASTEは、[アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計]のプレプログラムとして建設されました。アメリカ国立電波天文台の超大型干渉[[電波望遠鏡群]]サイトでテストされたALMAプロトタイプアンテナとは仕様が異なり、ASTEは国立天文台チリ観測所によって設置・運用されています。観測の主な目的は、サブミリ波帯での電波観測です。高地での運用のため、少人数での観測が可能なように自動化が進められ、人工衛星を用いた専用回線を通じて、国立天文台三鷹や野辺山から遠隔で観測が可能です。

業務解説

観測計画

ASTEはALMA観測計画との連携を重視しており、口径10メートルの電波望遠鏡として、2002年に設置されました。ALMAプロジェクトにおけるテスト機としての役割も果たしており、2004年から本格的な観測を開始しています。南半球に数少ないサブミリ波望遠鏡の一つであり、ALMAの約10km北に位置しています。ASTEはサブミリ波領域の観測施設であると同時に、ALMA計画のプレプログラムとしての研究も行っています。観測機器の信頼性測定やメンテナンス性に関する実験も実施しています。

一般公開

標高5000m近い高地に位置するため、一般公開の予定はありません。しかし、国立天文台野辺山地区特別公開や三鷹キャンパス特別公開などで、業務解説や研究成果の資料を公開しています。

技術仕様

基本仕様は、野辺山宇宙電波観測所に設置されている口径10メートルの電波望遠鏡と同じです。しかし、観測波長がサブミリ波であるため、鏡面精度は野辺山の電波望遠鏡よりも優れています。受信機としては、350GHz帯のサブミリ波を観測できる分光観測用のCATS345が搭載され、科学運用に活用されています。また、2007年から2008年にかけては、270GHz帯の連続波カメラAzTECも搭載されました。

仕様

形式: 口径10m反射式電波望遠鏡
鏡面材質: アルミパネル+プラスチックコート
鏡面構造: ホモロガス変形法 + 温度調整用保護カバー及び内部空調用ファン
鏡面精度: 実測値 20μm/10m（補償装置駆動時）
鏡面精度測定装置: 人工電波干渉測定装置（通常補正用）、レーザ干渉測定装置（製造時補正）
光学系: カセグレイン式
架台: 経緯台式
制御: 全自動制御（インターネット通信による遠隔運用可能）
駆動系: ACサーボ+ハーモニックドライブ+フリクションドライブ
架台駆動: 0.05秒角（水平・垂直ともに）
追尾精度: 0.1秒角（精度　0.05±0.05秒）
観測装置：SISヘテロダイン受信機CATS345、ボロメータカメラAzTEC
観測波長: 270GHz帯 (AzTEC:連続波観測), 350GHz帯 (CATS345:分光観測）
観測補助装置: 1024chデジタル分光計（稼動中）、2048chデジタル分光計（開発中）

研究成果

2007年6月22日: 銀河系中心領域における高励起ガスの分布を明らかにしました。
2008年5月10日: スターバースト銀河NGC986に高密度ガスの巨大バー構造を特定しました。
2011年: 超モンスター銀河「オロチ」を発見しました。

関連項目

関連施設:
なんてん（ASTE望遠鏡の隣に設置された望遠鏡）
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計
主管運用組織: 国立天文台
共同研究機関:
国内: 茨城大学、東京大学、名古屋大学、大阪府立大学、神戸大学、慶應義塾大学
国外: チリ大学、マサチューセッツ大学
学術研究分野:
天文学 - 電波天文学
観測機器開発
観測機器信頼性試験

外部リンク

国立天文台（NAOJ）
ASTE (アステ：アタカマサブミリ波望遠鏡実験)ホームページ（国立天文台チリ観測所）
* 連続波カメラAzTECホームページ（マサチューセッツ大学）

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