オン・テンチョン

オン・テンチョン（Ong Teng Cheong、王鼎昌）は、1936年1月22日にシンガポールで生まれ、2002年2月8日に生涯を閉じました。彼はシンガポールの第5代大統領であり、同国初の直接選挙によって選ばれた大統領として知られています。

生い立ちと教育

幼少期は祖父母と過ごし、中国の古典や福建語を学びました。1942年から1945年の日本占領時代には日本語も習得しています。1961年にはオーストラリアのアデレード大学で建築学の学士号を取得し、1967年にはイギリスのリバプール大学で都市計画の修士号を取得しました。

キャリア

帰国後は、国家開発省の公務員として都市計画に携わった後、1971年に自身の建築会社を設立しました。1972年には人民行動党から国会議員に初当選し、政治家としてのキャリアをスタートさせました。1974年後半には建築の仕事から離れ、弟の死をきっかけに建築会社を手放しています。

1975年からはチャンギ空港の建設に関わり、新空港のコンセプトや管制塔の設計に貢献しました。1977年から1981年まで文化大臣を務め、シンガポール文化財団の設立にも尽力しました。その後、1983年には全国労働組合評議会書記長、1985年には第二副首相、1990年には副首相に就任するなど、要職を歴任しました。

大統領就任

1991年の憲法改正後、1993年に初の直接選挙による大統領選が実施されました。オン・テンチョンは当時副首相でしたが、立候補にあたり閣僚を辞任し、党を脱退しました。選挙戦では元大蔵省高級官僚のチュア・キムユーと争い、58.7%の得票率で当選、1993年9月1日に大統領に就任しました。

大統領在任中は、選挙で選出された初の大統領として、それまで儀礼的な役割であった大統領の権限や役割を整理しました。1992年に低悪性度の悪性リンパ腫と診断されましたが、任期満了を翌年に控えた1998年に再発しました。1999年7月16日に大統領選不出馬を表明し、同年8月31日に退任しました。

死去とその後

オン・テンチョンは2002年2月8日に自宅で亡くなりました。彼の功績を称え、2003年3月にはシンガポール労働研究所が「オン・テンチョン労働研究所」に改名されました。また、カザフスタン南東部の天山山脈にある標高4743メートルの山が「オン・テンチョン山」と命名されました。これは、シンガポール人登山隊が初登頂した際に、オン・テンチョン大統領の支援に感謝したことに由来します。当初、公式認定には時間がかかりましたが、2017年6月28日に正式に承認され、シンガポール人の名前が付けられた初の山となりました。

オン・テンチョンは、建築家、政治家、そして大統領として、シンガポールの発展に大きく貢献した人物でした。彼の功績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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