オ・レ・アオ・オ・レ・マーロー

オ・レ・アオ・オ・レ・マーロー：サモア独立国の元首

オ・レ・アオ・オ・レ・マーロー（サモア語: O le Ao o le Mālō）は、サモア独立国の国家元首を指す称号であり、日本語では「国家元首」または「元首」と訳されます。この称号は、1962年1月1日のサモア独立時に施行された憲法によって定められました。

称号の意味と敬称

サモア語の ao は「頭」、mālō は「政府」「王国」を意味します。o は所有格を示す前置詞、le は定冠詞です。したがって、O le Ao o le Mālō は文字通りには「政府の頭」を意味し、英語の the Head of the State に相当します。英語での敬称は His Highness （殿下）が用いられていましたが、近年では His Excellency （閣下）が用いられるようになっています。

重要な点として、O le Ao o le Mālō は固有名詞であり、「国家元首」という普通名詞ではありません。サモア憲法の正文は英語で書かれていますが、国家元首の正式な称号はサモア語の発音を忠実になぞった O le Ao o le Mālō であると明記されています。

選出方法と任期

オ・レ・アオ・オ・レ・マーローは、サモアの立法議会によって選挙で選出されます。定員は1名で、任期は5年です。再選は禁止されていません。また、国家元首が欠けた場合や職務遂行が困難な場合、あるいは外遊などで不在にする場合に備え、定員3名以内の代表者会議が設置され、国家元首の職務を代行します。代表者会議の構成員も立法議会が選挙で選出します。

憲法の規定上は、立法議会の被選挙権を有する者（伝統的指導者層である首長（matai）身分の者）はすべて、オ・レ・アオ・オ・レ・マーローの被選挙権を有します。しかし、実際には、サモア社会において特に高い権威を有する4人の大首長の中から選ばれることが慣例となっています。この4人の大首長の地位は、総称してタマ・ア・アイガと呼ばれ、それぞれ独自に、マリエトア、トゥプア・タマセセ、マタッアファ、トゥイマレアリッイファノという世襲の称号を名乗っています。

歴史的経緯

サモアが独立する以前は、ニュージーランドを施政権者とする国際連合の信託統治領でした。施政の最高責任者はニュージーランドから派遣される高等弁務官でしたが、タマ・ア・アイガのうち2名が選ばれて高等弁務官の顧問（サモア語で Fautua）となり補佐しました。また、高等弁務官とタマ・ア・アイガ2名からなる国務会議が設置され、事実上の国家元首の地位を代行する体制が整えられました。独立に際しては、独立への貢献を評価し、トゥプア・タマセセ・メアッオレとマリエトア・タヌマフィリ2世という特定の個人に対する特別規定が憲法に設けられました。この規定により、両者は終身にわたって共同で国家元首の地位に就くこととなりました。

トゥプア・タマセセ・メアッオレは1963年に死去し、マリエトア・タヌマフィリ2世は2007年に死去するまで約44年間にわたって単独でオ・レ・アオ・オ・レ・マーローを務めました。マリエトア・タヌマフィリ2世の死去後、独立後初めて選挙で選ばれたオ・レ・アオ・オ・レ・マーローとして、トゥイアトゥア・トゥプア・タマセセ・エフィが2007年に就任しました。

憲法上の権限と義務

オ・レ・アオ・オ・レ・マーローは、憲法によって様々な権限と義務を付与されています。以下はその主なものです。

利益を伴う職務との兼任禁止
立法議会による罷免
内閣・首相・担当閣僚の助言に基づく職務遂行
国璽の保管と使用
行政権の行使
首相の任命
大臣の任命
首相の任期終了
執行評議会の構成
司法長官の任命
国会の構成
立法議会の招集
法案への同意と拒否権の行使
立法議会の解散
最高裁判所首席裁判官の任命
人事委員会の委員任命
国庫からの金銭支出の承認
会計検査院長の任命
非常事態の布告
緊急命令の発令
* 恩赦の付与

就任時の宣誓

オ・レ・アオ・オ・レ・マーローは、就任に先立ち、最高裁判所の首席裁判官の面前で宣誓を行うことが義務付けられています。宣誓の文言は以下の通りです。

「私……は、国家元首の地位の威厳を保ち、憲法及び法に従い、サモア独立国の統治における私の義務を公正かつ忠実に遂行することを、全能の神にかけて誓います。以上の言葉に相違ありません。」

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