マリエトア・タヌマフィリ2世

マリエトア・タヌマフィリ2世（Malietoa Tanumafili II）は、1913年1月4日に生まれ、2007年5月11日に94歳で亡くなったサモアの国家元首です。1962年のサモア独立からその生涯を閉じるまで、45年以上にわたり、サモアの発展と安定に尽力しました。

生い立ちと出自

マリエトアは、サモア社会において特別な権威を持つ4つの大首長家の一つであるマリエトア家の出身です。この家系は、歴史的にサモアの支配権を巡る争いで重要な役割を果たしており、特に19世紀以降の欧米列強の進出の際には、他の大首長家とともに、サモアの将来を左右する重要な立場にありました。マリエトア家からは、過去に「サモア国王」を名乗った人物も複数輩出しています。

父は一時「サモア国王」を名乗ったマリエトア・タヌマフィリ1世、母はモモエ・ルペウルイヴァ・メレイセアーで、長男（第3子）として誕生しました。彼は、ドイツ植民地時代を経て、ニュージーランドの委任統治下にあった時代に、オークランド大学で高等教育を受け、聖スティーヴンス校とウィーズリー校で学びました。学生時代には、ボクシング、ラグビー、クリケットなどのスポーツに親しみました。

政治的経歴

1939年に父が死去すると、翌1940年にマリエトアの称号を継承し、ニュージーランドから派遣される高等弁務官の顧問（ファウトゥア）となりました。この役職は、サモアの政治において重要な役割を担っていました。1958年には、ニュージーランド代表団の一員として国際連合総会に出席しています。1959年には、同じくファウトゥアであったトゥプア・タマセセ・メアッオレと共に、新憲法起草と独立準備委員会の共同議長を務め、サモアの独立に向けた重要な役割を果たしました。同年には、国家元首に代わる組織として、高等弁務官と2人のタマ・ア・アイガからなる国務会議が設置され、タヌマフィリ2世もそのメンバーとなりました。

新憲法起草に際して、メアッオレとタヌマフィリ2世が果たした役割を尊重する形で、独立後の初代国家元首（オ・レ・アオ・オ・レ・マーロー）は、両名が共同かつ終身で務めることとなりました。1962年1月1日の西サモア独立とともに、両名は共同で国家元首に就任しました。メアッオレが1963年に亡くなった後は、タヌマフィリ2世が単独で国家元首を務め、国民から「国父」として敬愛されました。諸外国からも事実上の国王として敬意を払われました。

外交と国際交流

タヌマフィリ2世は、外交にも熱心で、1976年に中華人民共和国を訪問したのをはじめ、西ドイツ、韓国、イギリス、フィジー、トンガ、アメリカのハワイ州など、多くの国々を訪れました。また、1984年のロサンゼルスオリンピックを観戦し、1989年には昭和天皇の大喪の礼と即位の礼に参列しています。トンガ王家とは親戚関係にあり、両国の関係は密接でした。

人道的な行動

1999年には、公共事業担当大臣が暗殺された事件で、死刑判決を受けた犯人たちの減刑に尽力するなど、人道的な側面も見られました。

人物像と晩年

タヌマフィリ2世は、イギリスの大英帝国勲章コマンダー爵、聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・グランドクロス爵、ニュージーランド・メリット勲章ナイト・コンパニオン爵などの爵位を保持していました。妻リリ・トゥヌとの間に3男3女をもうけました。生涯にわたってゴルフを愛し、晩年までゴルフカートを自ら運転する姿が目撃されています。また、キリスト教徒が多数派のサモアにおいて、彼はバハイ教の信者でした。

2007年5月11日、首都アピアで94歳で死去しました。当時の現職国家元首としては世界最高齢でした。彼の死は、多くのメディアで「サモア国王の崩御」と誤って報道されるなど、その存在感は非常に大きなものでした。

タヌマフィリ2世は、サモアの独立と発展に生涯を捧げた偉大な指導者であり、その功績は長く語り継がれるでしょう。

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