オーガスト・ブッシュ

オーガスト・アンハイザー・"グッシー"・ブッシュ・ジュニア（1899年3月28日 - 1989年9月29日）は、アメリカのビール会社アンハイザー・ブッシュの元会長であり、MLBセントルイス・カージナルスの元オーナーです。彼の名前は父、息子、孫と受け継がれているため、「グッシー・ブッシュ」として知られています。彼はアンハイザー・ブッシュの創業者、アドルフス・ブッシュの孫にあたります。

カージナルスのオーナーとして

1953年、ブッシュはセントルイス・カージナルスを買収し、オーナーに就任しました。当時、オーナーだったフレッド・サイが脱税で有罪となり、コミッショナーのフォード・フリックが身売りを命じたことがきっかけでした。アンハイザー・ブッシュは、製品の宣伝のためにMLB球団を買収した最初の企業の一つと言えるでしょう。

買収時、ブッシュは「スポーツという観点から取り組むつもりで、バドワイザーの宣伝に利用するつもりはない」と発言しました。しかし実際には、アンハイザー・ブッシュの社内会議で、バドワイザーの宣伝効果を期待して球団買収を正当化していました。本拠地球場の名称を「バドワイザー・パーク」にすることを提案しましたが、ナショナルリーグに拒否され、「ブッシュ・スタジアム」という名称に落ち着きました。

オーナーとしてのブッシュは、時に暴君的な性格を発揮したと評されます。1970年に発生した「カート・フラッド事件」は、その一例です。カート・フラッドは、1969年のオフシーズンにフィラデルフィア・フィリーズとの複数トレードを拒否し、自らを商品として扱われたと感じて球団を訴えました。フラッドがトレード要員となったのは、1968年シーズン終了後に3万ドルの昇給を要求し、ブッシュが激怒したことが原因でした。そのトレードを通告したのは、球団の下っ端社員だったと言われています。

カージナルスの功労者として

一方で、ブッシュはカージナルスの発展に大きく貢献した人物でもあります。1960年代、カージナルスはナショナルリーグで唯一、黒人選手がいない球団となっていました。しかし、ブッシュが「バドワイザーは黒人労働者にも愛飲されている」と発言したことで、ルー・ブロックやボブ・ギブソンといった黒人選手を獲得することができ、球団は黄金時代を築きました。1984年には、その功績を称えられ、カージナルスはブッシュの背番号『85』を永久欠番としました。これは、表彰された当時のブッシュの年齢に由来しています。

1989年9月29日、ブッシュは肺炎のため90歳で亡くなりました。彼の後を継いでアンハイザー・ブッシュ社の社長・会長となったのは、息子のオーガスト・ブッシュ三世でした。

ロジャー・マリスとの関係

ブッシュは、カージナルスのワールドシリーズ制覇とナショナルリーグ制覇に貢献したロジャー・マリスに対し、引退後のビール配送業者としての第二の人生を斡旋しました。

グッシー・ブッシュは、その功績と毀誉褒貶によって、セントルイス・カージナルスの歴史に深く名を刻んだ人物と言えるでしょう。

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