オーストリア辺境伯領

オーストリア辺境伯領：東方辺境から自立した公国へ

オーストリア辺境伯領は、10世紀後半から12世紀中頃にかけて、現在のオーストリア北部に存在した辺境伯領です。その起源は、アヴァール人の侵入に備えて設けられた東バイエルンの防衛機構に遡ります。

建国の背景

9世紀末、マジャール人の侵攻によって東フランク王国の東部地域は大きな打撃を受けました。955年のレヒフェルトの戦いでオットー1世がマジャール人を破ると、ドイツ人による国土の奪還が始まりました。970年頃までに奪還された地域は再編され、オストマルク（東方辺境伯領）として再出発します。レオポルト1世がこの地を改めてオーストリア辺境伯領としました。

バーベンベルク家の統治

976年、バーベンベルク家がオーストリア辺境伯領の統治を開始します。神聖ローマ帝国の東の国境を守るという重要な役割を担い、ハンガリーとの緩衝地帯として機能しました。歴代の辺境伯は、領内の安定と発展に尽力し、特にレオポルト3世の時代には、都市の建設や支援を通じて、領地の独立性を高めることに成功しました。

オーストリア公国への昇格

12世紀に入ると、オーストリア辺境伯領は更なる発展を遂げます。1156年、皇帝フリードリヒ1世は、ハインリヒ獅子公の要求に応えてバイエルン公の地位を返還する代わりに、当時の辺境伯ハインリヒ2世をオーストリア公に叙爵しました。これにより、オーストリアは公国となり、神聖ローマ帝国における独立した領邦国家として歩み始めることになります。

名称の由来

「オーストリア」という名称は、古高ドイツ語の「Ostarrîchi」に由来します。これは「東の国」を意味し、オットー3世の時代の寄贈証書に初めて登場しました。この名称は、現在のドイツ語でオーストリアを意味する「Österreich」の語源となっています。

まとめ

オーストリア辺境伯領は、その成立から公国への昇格まで、複雑な歴史的背景と変遷を経てきました。東方からの外敵に対する防衛拠点としての役割を担いながら、バーベンベルク家の統治下で着実に発展し、最終的には自立した公国として、その後のオーストリアの歴史を切り開いていくことになります。

もう一度検索