オーブライト

オーブライトは、アウブレサイトとも呼ばれる、エイコンドライト隕石の一種です。

名称と分類

この隕石分類は、1836年9月14日にフランスのヴォクリューズ県ニヨン村近郊、オブラック（Aubres）という場所に落下した小さな隕石標本に由来しています。アウブレ隕石（Aubres meteorite）はエンスタタイトを主成分とするエイコンドライトであり、これがこの特殊な隕石群のタイプ標本となりました。オーブライトは、その主要な鉱物組成からエンスタタイト・エイコンドライトとしても知られています。

組成と特徴

オーブライトの主な構成成分は、鉄分が少なくマグネシウムを豊富に含む斜方輝石である頑火輝石（エンスタタイト）です。これらのエンスタタイトは、しばしば大きく白い結晶として観察されます。石基部分には、わずかにカンラン石、ニッケル鉄金属、トロイライト（硫化鉄鉱物）などの鉱物が共存しています。このような鉱物組み合わせは、オーブライトが極めて強い還元的な環境下で形成されたことを示唆しています。外観としては、通常明るい色をしており、表面には再突入時の加熱によって生じた茶色い融解殻を持つものが見られます。

形成過程

オーブライトは火成作用、すなわち高温で融解したマグマが固まって形成された痕跡を示しています。この点は、太陽系形成初期の原始的な状態を保つコンドライトとは異なり、分化が進んだ天体で形成されたことを物語っています。オーブライトの多くの標本が著しい角礫岩化、つまり鉱物や岩石の破片が集まって固まった構造を示しており、これは母天体が経験した激しい衝突や熱的な変成といった激動の歴史を反映しています。また、一部のオーブライトからは、組成の異なるコンドライトの捕獲岩が見つかることがあります。これは、オーブライトの母天体が、F-コンドライト組成を持つ別の小惑星と衝突した際に、その破片を取り込んだ結果だと考えられています。

母天体候補

オーブライト隕石の反射スペクトルを様々な小惑星のスペクトルと比較した研究では、ニサ族に属するE型小惑星との高い類似性が指摘されています。E型小惑星は表面がエンスタタイト質の物質で覆われていると考えられています。特に、地球近傍を公転する小惑星エゲル（3103 Eger）は、スペクトル特性などから、オーブライトの主要な母天体の一つである可能性がしばしば議論されています。したがって、オーブライトは、分化した小惑星、おそらくはエゲルのような天体から、衝突などのプロセスを経て地球に飛来したものと考えられています。

オーブライトの研究は、太陽系初期の分化プロセスや、小惑星上での火成活動、そして天体衝突の歴史を理解する上で重要な手がかりを与えています。

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