オームリ

オームリとは

オームリ（露: О́муль、ブ: Оомоли）は、ロシアのバイカル湖に生息するサケ科の魚です。バイカル湖は世界で最も深く、最も古い湖であり、オームリはその固有種として知られています。美味で珍重されており、バイカル湖において最も重要な水産種の一つです。

分布

オームリはバイカル湖に広く分布しています。産卵期にはバイカル湖に流れ込む河川を遡上し、産卵を終えると湖に戻ります。

生態

オームリは動物性プランクトンや小魚を主食としており、湖の沖合の表層でこれらの餌を捕食します。まれに湖底の小生物を食べることもあります。成魚の標準的な大きさは36cmから38cm、重さは600gから800g程度ですが、これまでに56cm、2.5kgのものが確認されています。一般的に、北部に生息する個体ほど小さくなる傾向があります。

比較的長命な魚であり、性成熟するまでに5年から15年ほどかかると考えられています。10月中旬頃になると、産卵のためにバイカル湖に流れ込む川を遡上します。川の上流で8000個から3万個の卵を産み、再びバイカル湖に戻ります。

オームリの起源については、北極海からエニセイ川とアンガラ川を遡上してバイカル湖にたどり着いたとする説と、かつて海であったころに付近にいた魚がバイカル湖に閉じ込められ、淡水化したとする説があります。本種は氷期から氷期末期にかけて発生したと考えられており、バイカル湖において大きな進化を遂げました。遡上する川や生息水域により特有の亜種と呼べるほどの変遷を遂げたものも存在し、これらの種の生殖隔離について議論されています。

水産資源としての利用

オームリは、バイカル湖周辺の人々にとって重要な食糧資源の一つです。ロシア全土で美味、珍味として知られており、輸出用としても重要な役割を果たしています。

1940年には年間漁獲高が6万トンから8万トンに達しましたが、乱獲により生息数が減少し、1969年に漁獲が停止されました。その後、1974年に厳しい漁獲制限のもとで漁獲が再開され、生息数は幾分回復しています。

オームリの燻製はバイカル湖周辺で広く販売されており、シベリア鉄道で旅をする旅行者にとって楽しみの一つとなっています。現地では塩漬けにしたものが好まれる傾向があります。

シベリアでは、ストロガニナと呼ばれる料理が一般的です。これは、生のまま凍らせたオームリの身を薄く削り、胡椒、塩、タマネギを添えたものです。

しかし、環境汚染と乱獲により再び生息数が減少したため、2017年末に再び漁獲が停止されました。

日本とホワイトフィッシュ

一般にホワイトフィッシュと呼ばれるシロマス属の魚類は、現在の日本領土内には分布していません。戦前には食糧増産を目的に、北アメリカおよびソビエト連邦から近縁種のホワイトフィッシュ（Coregonus lavaretus）やレイクホワイトフィッシュ（Coregonus clupeaformis）などの卵が導入されたことがありましたが、定着は見られませんでした。

その後、1969年から1983年にかけてオームリを含むシロマス属の5種の導入が主に寒冷地（青森県の十二湖など）で試みられましたが、オームリの量産には至りませんでした。

いくつかの地方では、その他のシロマス属の養殖に成功し、現地の湖沼に放流しています。そのうち長野県では、マレーナ（Coregonus lavaretus maraena）という種にシナノユキマスという流通名をつけて特産品としています。その他にも、北海道、秋田県、山形県、福島県、愛媛県などで普及が図られています。

関連項目

マス
サケ
バイカル湖
シベリア鉄道
* 魚の一覧

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