オールラウンダー (自転車競技)

ロードレースにおけるオールラウンダー

ロードレースにおけるオールラウンダーとは、特定のコースに特化せず、山岳コース、平坦路、タイムトライアルなど、様々な状況で高いパフォーマンスを発揮できる選手のことです。特に、数日間にわたるステージレースや、3週間におよぶグランツールといった長丁場のレースで、チームのエースとしての役割を担うことが期待されます。

オールラウンダーの特徴

オールラウンダーは、上り、平地、タイムトライアルのいずれにおいても、平均以上の実力を兼ね備えています。一流のオールラウンダーともなると、クライマー（登山を得意とする選手）に匹敵する登坂能力と、タイムトライアルスペシャリスト（個人タイムトライアルを得意とする選手）に匹敵する独走力を併せ持っていることさえあります。ただし、連続する超級山岳や長距離のタイムトライアルにおいては、それぞれの能力に特化したスペシャリストには、わずかに及ばない場合があります。

ステージレースにおける戦い方としては、タイムトライアルと山岳ステージで他の選手にタイム差をつけ、平坦ステージでは集団ゴールすることで、タイム差を最小限に抑えるという戦略が基本となります。そのため、純粋なスプリント能力は特に要求されません。しかし、ステージ上位3名にボーナスタイムが付与されるレースにおいては、スプリント力も総合成績を争う上での武器となります。

スプリント能力について

オールラウンダーの代表格であるエディ・メルクスやベルナール・イノーは、ツール・ド・フランスで総合優勝と同時にスプリント賞を獲得した実績があります。また、ショーン・ケリーやランス・アームストロングのように、元々はスプリンターとしてデビューし、後にオールラウンダーに転向した選手もいます。これらの例からもわかるように、オールラウンダーはスプリントが全くできないわけではありません。しかし、集団スプリントは落車の危険性が高く、脚への負担も大きいため、総合優勝を狙う選手は、あえてゴールスプリントを避ける傾向があります。また、集団スプリントにおいては、ステージ優勝を狙わない総合上位を争う選手は、他の選手にステージ優勝を譲るという暗黙の了解が存在することもあります。

レースでの役割

グランツール（ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ）をはじめとするステージレースでは、エースとして総合優勝を狙うことが主な役割です。また、山岳ステージやタイムトライアルステージでのステージ優勝も重要な目標となります。

ワンデイレース（1日で完結するレース）においては、リエージュ～バストーニュ～リエージュやアムステルゴールドレースなど、アップダウンの激しいコース設定がされたレースで、エースとしての役割を担います。

代表的な選手

以下に、近年のロードレース界を代表するオールラウンダーを挙げます。

タデイ・ポガチャル（スロベニア）
世界選手権個人ロード優勝1回 (2024)
ツール・ド・フランス総合優勝3回 (2020, 2021, 2024)、ジロ・デ・イタリア総合優勝1回 (2024)
パリ〜ニース総合優勝1回 (2023)、 ティレーノ〜アドリアティコ 総合優勝2回 (2021, 2022)、 ボルタ・ア・カタルーニャ総合優勝1回 (2024)、 UAEツアー総合優勝2回 (2021, 2022)、 ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝1回 (2019)
ロンド・ファン・フラーンデレン優勝1回 (2023)、 イル・ロンバルディア優勝4回 (2021, 2022, 2023, 2024)、 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝2回 (2021, 2024)、ストラーデ・ビアンケ優勝2回 (2022, 2024)
史上3人目のトリプルクラウン達成者。
ヨナス・ヴィンゲゴー（デンマーク）
ツール・ド・フランス総合優勝2回 (2022, 2023)、 イツリア・バスク・カントリー総合優勝1回 (2023)、クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝1回 (2023)、ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝1回 (2024)、ツール・ド・ポローニュ総合優勝1回 (2024)
レムコ・エヴェネプール（ベルギー）
オリンピック個人ロード 金メダル (2024・パリ)、オリンピック個人TT 金メダル (2024・パリ)
世界選手権個人ロード優勝1回 (2022)、世界選手権個人TT優勝2回 (2023, 2024)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝1回 (2022)、ツール・ド・ポローニュ総合優勝1回 (2020)、 UAEツアー総合優勝1回 (2023)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝2回 (2022, 2023)
男子史上初のオリンピック2種目(個人ロード・個人TT)の同一年制覇者。
プリモシュ・ログリッチ（スロベニア）
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝4回 (2019, 2020, 2021, 2024)、ジロ・デ・イタリア総合優勝1回 (2023)
オリンピック個人TT 金メダル (2021・東京)
クリテリウム・デュ・ドフィネ総合優勝2回 (2022, 2024)、イツリア・バスク・カントリー総合優勝2回 (2018, 2021)、 ツール・ド・ロマンディ総合優勝2回 (2018, 2019)、 UAEツアー総合優勝1回 (2019)、ボルタ・ア・カタルーニャ総合優勝1回 (2023)、ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝2回 (2019, 2023)、パリ〜ニース 総合優勝1回 (2022)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝1回 (2020)

これらの選手以外にも、アダム・イェーツ、サイモン・イェーツ、トム・デュムラン、ゲラント・トーマス、クリス・フルーム、ヴィンチェンツォ・ニバリ、リッチー・ポート、アレハンドロ・バルベルデ、アルベルト・コンタドール、ブラッドリー・ウィギンスなど、数多くの名選手がオールラウンダーとして活躍しました。

過去の代表的な選手

グレッグ・レモン（アメリカ）
ジーノ・バルタリ（イタリア）
ファウスト・コッピ（イタリア）
ミゲル・インドゥライン（スペイン）
ヤン・ウルリッヒ（ドイツ）
ジャック・アンクティル（フランス）
ベルナール・イノー（フランス）
エディ・メルクス（ベルギー）
ジャンニ・ブーニョ（イタリア）
ステファン・ロシュ（アイルランド）
デニス・メンショフ（ロシア）
カデル・エヴァンス（オーストラリア）
アレクサンドル・ヴィノクロフ（カザフスタン）
イヴァン・バッソ（イタリア）
リーヴァイ・ライプハイマー（アメリカ）
アンドレアス・クレーデン（ドイツ）
ランス・アームストロング（アメリカ）
サムエル・サンチェス（スペイン）

関連項目

クライマー
スプリンター
ルーラー（スピードマン）
タイムトライアルスペシャリスト
クラシックスペシャリスト
* パンチャー

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