オーヴァーランド・リミテッド

オーヴァーランド・リミテッド



概要


オーヴァーランド・リミテッド（Overland Limited）は、アメリカ合衆国において、ユニオン・パシフィック鉄道（UP）をはじめとする鉄道会社によって1887年から1963年まで運行された、大陸横断型の長距離旅客列車です。この列車は、北米最初の大陸横断鉄道が開通した歴史的なルートを走り、およそ80年間にわたりアメリカ東西を結ぶ主要な交通手段の一つとして活躍しました。

歴史的背景：オーヴァーランド・ルート


この列車がその名を冠する「オーヴァーランド・ルート」は、アメリカ史における画期的な出来事から始まりました。1869年、ユニオン・パシフィック鉄道とセントラル・パシフィック鉄道（後にサザン・パシフィック鉄道に吸収合併）の路線が接続され、ネブラスカ州オマハからカリフォルニア州サクラメントに至る約2,826km（1,756マイル）の距離で、北米大陸初の連続した大陸横断鉄道が完成しました。このルートは当時の交通・物流に革命をもたらし、西部開拓や国家の一体化に大きく貢献しました。オーヴァーランド・リミテッドは、この重要な幹線上で運行を開始した列車です。

運行の開始と提携鉄道


オーヴァーランド・リミテッドの歴史は、1887年に「オーヴァーランド・フライヤー（Overland Flyer）」という名称でユニオン・パシフィック鉄道が運行を開始したことに始まります。当初は、イリノイ州シカゴとカリフォルニア州オークランドまたはサンフランシスコの間を結んでいました。この長大な旅程を実現するため、複数の鉄道会社との提携が必要でした。
運行開始当初は、シカゴ・ミルウォーキー・アンド・セント・ポール鉄道（Chicago, Milwaukee, St. Paul and Pacific Railroad, CMSP&P RR）、ユニオン・パシフィック鉄道、サザン・パシフィック鉄道が協力して列車を運行しました。シカゴを出発した列車は、まずミルウォーキー鉄道線を経由し、オマハでユニオン・パシフィック鉄道線に乗り入れ、さらにユタ州オグデンでサザン・パシフィック鉄道線に接続してカリフォルニアへ向かうルートでした。
その後、提携関係に変更が生じました。1889年からは、ミルウォーキー鉄道に代わってシカゴ・ノース・ウェスタン鉄道（Chicago and North Western Railway, C&NW）が提携に加わりました。これにより、1889年から1955年までの66年間、シカゴとオマハの間はシカゴ・ノース・ウェスタン鉄道の路線を経由して運行されることになりました。

役割の変化と終焉


オーヴァーランド・リミテッドは、運行開始から長い間、大陸横断列車網の中核を担う主要列車としてその地位を確立していました。しかし、時代が進むにつれて状況は変化します。
1936年には、シカゴ～サンフランシスコ間に、より高速で流線型の新型列車「シティ・オブ・サンフランシスコ（City of San Francisco）」が登場しました。これにより、大陸横断旅客輸送の「主役」は徐々にシティ・オブ・サンフランシスコへと移っていきます。さらに、第二次世界大戦後には航空機や自動車が急速に普及し、長距離鉄道旅客輸送全体が衰退の一途をたどることになります。
こうした社会情勢の変化の中で、オーヴァーランド・リミテッドの重要性は相対的に低下していきました。運行晩年には、ユタ州オグデンからカリフォルニア州オークランドまでのサザン・パシフィック鉄道線区間において、眺望の良いドームカーが連結された時期もありましたが、全体の流れを覆すには至りませんでした。
最終的に、オーヴァーランド・リミテッドは1963年をもって定期旅客列車としての運行を終了しました。その後、ユニオン・パシフィック鉄道の区間では、愛称を持たない27列車・28列車として、郵便物や乗務員輸送が主体となりつつも、一部の客車を旅客に開放する形でしばらくの間存続しました。

名称の変遷


運行期間中に、列車の名称は何度か変更されています。

このように、オーヴァーランド・リミテッドは、大陸横断鉄道の黎明期からその終焉期近くまで、アメリカの鉄道旅客輸送の歴史を駆け抜けた象徴的な列車の一つです。

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