カイニン酸型グルタミン酸受容体

カイニン酸型グルタミン酸受容体 (KAR)

カイニン酸型グルタミン酸受容体、通称カイニン酸受容体（KAR）は、神経伝達物質であるグルタミン酸に反応するイオノトロピック受容体の一種類です。最初に、藻類から単離されたカイニン酸によってこの受容体が特定されました。カイニン酸受容体は、伝統的にAMPA受容体と合わせて非NMDA受容体に位置づけられていますが、AMPAやNMDA受容体と比較すると、その機能やメカニズムについてはまだ多くの未解明な点があります。

構造

カイニン酸受容体は、五つの異なるサブユニット、すなわちGluK1（GRIK1）、GluK2（GRIK2）、GluK3（GRIK3）、GluK4（GRIK4）、GluK5（GRIK5）から構成されており、これらが組み合わさることで四量体の構造を形成します。具体的には、GluK1からGluK3はホモ四量体としてもヘテロ四量体としても機能し、GluK4とGluK5は第1から第3のサブユニットと組み合わさることで受容体を形成します。

各サブユニットは約400残基からなる細胞外N末端ドメインを持ち、これが受容体の組み立てに深く関与しています。また、神経伝達物質が結合するためのS1領域や、細胞膜を貫通するM1からM4の膜貫通領域も重要な構成要素です。リガンド結合ポケットにおけるサブユニット間の差異によって、特定のアゴニストやアンタゴニストが開発されています。

コンダクタンス

カイニン酸受容体はナトリウムイオンとカリウムイオンを透過し、1チャネルのコンダクタンスはAMPA受容体と同程度の約20 pSです。しかし、シナプス後電位の変化速度はAMPA受容体よりも遅く、カルシウムイオンの透過性は通常非常に低いことが多いです。これらの特性は、受容体のサブユニットやRNA編集の影響を受けることがあります。

役割

カイニン酸受容体はシナプス前およびシナプス後に存在し、神経伝達の調整に関与しています。AMPA受容体やNMDA受容体に比べて、脳内での分布は狭く、その機能も未解明な部分が多数存在します。カイニン酸は、てんかん発作を引き起こす要因の一つとされ、GluK2やGluK1サブユニットの活性化は、発作感受性に深く関与しています。

また、カイニン酸受容体はさまざまな神経疾患とも関連しており、統合失調症やうつ病、自閉症、ハンチントン病、双極性障害、てんかんなどにおいてその発現が観察されています。しかし、GluK1からGluK5の変異と疾患との因果関係はまだ解明されておらず、さらなる研究が求められています。

可塑性

カイニン酸受容体はシナプス可塑性に微小な影響を与える役割を果たしています。シナプス後細胞の発火可能性への影響や、シナプス前細胞における神経伝達物質の放出量への影響が観察されており、これらの効果は迅速に現れて長期的に持続することがあります。

リガンド

カイニン酸受容体にはさまざまなリガンドが存在し、アゴニストには5-ヨードウィラージンやATPA、ドウモイ酸、グルタミン酸、カイニン酸などが含まれます。アンタゴニストにはCNQXやDNQX、エタノール（非選択的）、NS102、キヌレン酸などがあります。

結論

カイニン酸型グルタミン酸受容体は、多彩な機能を持ち、特に神経伝達の調整や神経疾患との関連性を示す重要な受容体です。今後の研究によって、その機能や関連するメカニズムの解明が期待されています。

もう一度検索