カイワレダイコン

カイワレダイコン（貝割れ大根）とは

カイワレダイコンは、ダイコンの発芽直後の胚軸と子葉を食用とするスプラウト野菜です。発芽に伴い、種子の時には存在しなかったビタミン、ミネラル、フィトケミカルなどの成分が生成されます。ローフードや酵素栄養学では、酵素を多く含む食材として注目されています。

概要

カイワレダイコンは、その独特の風味と栄養価の高さから、様々な料理に利用されます。ピリッとした辛味が特徴で、生のままサラダや丼物の彩りとして用いられることが多いです。また、近年では健康志向の高まりから、スーパーなどでも手軽に購入できるようになりました。

日本のカイワレダイコン農家の多くは、カイワレダイコンだけでなく、ブロッコリースプラウトやレッドキャベツスプラウト、豆苗、そば菜など、多品種のスプラウトを生産しています。このため、以前は「日本かいわれ協会」という名称でしたが、現在は「日本スプラウト協会」に改称されています。

歴史

カイワレダイコンの原産地は、地中海沿岸、中央アジア、東南アジアなど諸説あります。日本では、平安時代の『和名類聚鈔』に「黄菜（おうさい）」として記述されており、当時から食用として利用されていたことがわかります。また、『宇津保物語』にも「さわやけの汁」として登場するなど、古くから日本人に親しまれてきた食材です。

現代の栽培法につながる水耕栽培による大量生産システムは、福岡県能古島に住む前田瀧郎によって考案されました。1986年には、日本かいわれ協会が発足し、9月18日を「かいわれ大根の日」と制定しました。その後、2005年に日本スプラウト協会に改称し、現在に至ります。

栽培方法

カイワレダイコンは、主に室内で栽培されます。春と秋が栽培に適していますが、冬でも保温や過湿をすることで一年中栽培が可能です。栽培適温は20～25度、発芽適温は25度です。発芽後は、最初は遮光してモヤシのように丈を伸ばし、草丈が8～10cmになったら光を当てて緑化させます。家庭菜園の場合は、プラスチック容器などを使って手軽に栽培することもできます。

種子は、一昼夜水に浸してから、浮かんだ不良種子を取り除き、重ならないように布の上に広げて芽出しさせてから蒔きます。真っ白でまっすぐな軸を育てるために、種子は密に蒔き、やや密植気味にするのがポイントです。光に当てないように草丈を8cmくらいに伸ばしたら、徐々に光を当てていきます。草丈が10～12cmになったら収穫のタイミングです。二葉の緑色が鮮やかで、軸が白いものが高品質とされています。

ダイコンであればどの品種でもカイワレダイコンとして栽培できますが、「大阪四十日大根」などの定番品種があります。種子は、殺菌剤などで処理されていない、スプラウト用のものが市販されています。

O157食中毒における風評被害

1996年、大阪府堺市で発生した学校給食でのO157による食中毒事件で、カイワレダイコンが感染源である可能性が高いと報道されました。これにより、カイワレダイコンは深刻な風評被害を受け、多くの生産者が倒産や廃業に追い込まれました。中には、自殺してしまう生産者も出るほどでした。

この状況を打開するため、当時の厚生大臣であった菅直人氏が、カイワレダイコンの安全性をアピールする目的で、カイワレダイコンを食べる姿が報道されました。数年後、食中毒の原因はカイワレダイコンではなかったことが判明しましたが、カイワレダイコン業界は大きな打撃を受けました。

この風評被害を教訓に、カイワレダイコン農家の間では、衛生管理に対する意識が飛躍的に高まりました。農林水産省の補助事業により、「かいわれ大根生産衛生管理マニュアル」が刊行され、次亜塩素酸ナトリウムを用いた衛生管理が推奨されるようになりました。

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