カエノラブディティス・エレガンス

カエノラブディティス・エレガンス（C. elegans）とは

カエノラブディティス・エレガンス（Caenorhabditis elegans）は、線形動物門に属する体長約1mmの線虫です。その透明な体と、細胞レベルでの詳細な研究が可能なことから、生物学におけるモデル生物として広く利用されています。特に発生生物学、神経生物学、遺伝学の分野で重要な役割を果たしています。

分類と名称

C. elegansは、かつては双腺綱に分類されていましたが、分子系統解析の結果、現在はクロマドラ綱プレクトゥス亜綱に分類されています。

学名であるCaenorhabditisは、Rhabditis（桿線虫属）に「新しい」を意味する接頭辞caeno-を付加したもので、「新桿線虫」を意味します。種小名のelegansはラテン語で「優美な」という意味です。

一般的には、学名の略称であるC. elegans（シー・エレガンス）という名称で広く知られていますが、学術論文などでは、初出時に正式名称を記述することが推奨されています。

和名としては、エレガンスセンチュウ、エレガンス線虫などがあります。

生態

多くの線虫が寄生性であるのに対し、C. elegansは土壌中で自由生活を送る細菌食性の生物です。実験室内では、寒天培地上で培養した大腸菌を餌として飼育することができます。しかし、自然界での生息地は明確に特定されておらず、人為的に作られた堆肥で発見されることが多いです。

形態

C. elegansの体細胞数は、雌雄同体では959個、雄では1033個またはそれを少し上回る数です。これらの細胞は、神経、筋肉、消化管、表皮、生殖巣などの組織や器官を構成しています。体表はクチクラで覆われ、体内には擬体腔があります。消化管は、口から肛門まで続く単純な構造です。神経系は、感覚細胞と運動ニューロンからなり、わずか302個の神経細胞で複雑な行動を可能にしています。

生殖

C. elegansは、性[[染色体]]によって性が決定されます。XX型は雌雄同体（雌）となり、XO型は雄となります。

雌雄同体は、幼虫期に精子を生産し、その後、卵を産みます。自己受精が可能であり、そのため遺伝的に均一な個体を容易に得ることができます。

一方、雄は約0.1%の割合で出現し、雌雄同体との交配が可能です。

発生

C. elegansの発生過程は、全ての細胞系譜が詳細に追跡されています。受精卵は螺旋卵割を行い、幼生は親に似た直達発生を行います。胚は約14時間で孵化し、幼虫は脱皮を繰り返して成虫になります。寿命は約1ヶ月です。

モデル生物としてのC. elegans

C. elegansは、1970年代からモデル生物として利用されています。その理由は、以下の様な優れた特徴を持つからです。

多細胞生物でありながら体が小さい：細胞数が少なく、細胞の観察が容易です。
自由生活性で飼育が容易：シャーレで培養可能で、大量に繁殖させることができます。
透明な体：細胞や器官を顕微鏡で観察しやすく、細胞系譜の追跡が可能です。
ゲノム情報が解読済み：遺伝子解析が容易で、遺伝子機能の研究に適しています。
発生過程が比較的単純：発生生物学の研究に適しています。
世代時間が短い：実験結果を比較的短期間で得ることが可能です。

これらの特徴から、C. elegansは様々な生物学研究で用いられてきました。例えば、器官発生やアポトーシスの遺伝的制御、神経系のメカニズム、RNA干渉（RNAi）現象の発見など、重要な発見に貢献しています。

特に、細胞系譜の完全な解明は、発生生物学における大きな進歩をもたらし、遺伝子治療の開発などにも貢献しています。

また、C. elegansを用いた癌検診の研究も進められており、その応用範囲は広がっています。さらに、細胞レベルでのシミュレーションプロジェクトも進行しており、今後も様々な分野での活躍が期待されています。

主な参考文献

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外部リンク

Caenorhabditis elegans - 脳科学辞典
Caenorhabditis elegans WWW Server
* 虫の集い - C. elegans 研究者コミュニティ

C. elegansは、生物学研究における重要なツールであり、その研究成果は、医学、生物工学など、幅広い分野への応用が期待されています。

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